自動車産業が米国で大きく発展した深い理由とは 経営者が意識しておくべき「与件」を読み解く
都市と都市を結ぶ街道が存在したという一点をとっても欧州は米国より先進的でしたが、馬車が対面通行できる道幅を備えた街道には石畳が敷かれ、路肩に排水溝まで施工されていたとなると、もはや差は圧倒的と言うしかありません。
なかでもツール・ド・フランスやダカール・ラリーのようなレースの伝統で知られるフランスは、ローマ帝国およびナポレオンが大軍を派遣する目的で高規格道路網を整備していたので、格段に恵まれていました。
シルヴァーゴーストとモデルTの違い
街道ネットワークの恩恵をフルに享受したのは、都市から遠く離れた地に複数の別荘を構える欧州の王室や貴族でした。
高出力を誇る自動車が登場するや否や、彼らは愛車で長距離高速移動をするようになり、グランドツアラー(GTカー)と呼ばれるカテゴリーを形成するに至ります。
その頂点に立ったのは、直列6気筒の7リットルエンジンを搭載したロールスロイスのシルヴァーゴースト(Silver Ghost)で、長くとったホイールベースが生み出す美しいシルエットと良好な乗り心地に魅せられる富裕層が続出したと言われています。
Locomotive Act(赤旗法)など早すぎる規制によって自滅したかに見えた英国がラグジュアリーの頂点に立つことができたのは、過去の栄光に基づく市場、具体的には王室と貴族の存在があったからと言ってよいでしょう。
ロールスロイスのシルヴァーゴーストも、悪路走破性と異次元の耐久性を訴求しており、富裕層のアドベンチャー魂を刺激したと言われています。1910年前後だと、欧州も街道を外れると悪路だらけだったからでしょう。
シルヴァーゴーストは、ほぼ時を同じくして市場に投入されたフォードのモデルTと比べると、狙った立地が大違いでした。
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