郵政3社株は、どれを買ってもそこそこ儲かる 今後の利益成長は不透明だが需給面で追い風

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まず3社のPBR(株価純資産倍率)。日本郵政は0.40倍、ゆうちょ銀行は0.45倍、かんぽ生命は0.65倍だ。3社とも企業が解散したときの価値を示す1倍を軒並み大きく割り込んでおり、一見すると割安といえそうだ。

ただし同業種である三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、第一生命保険なども1倍を割り込んでおり、大きな差はない。単純に、PBR1倍になるまで株価上昇の余地がある、と考えるのは早計だ。

巷間言われている「配当利回りが高いのが魅力」というのは本当だろうか。売り出し価格で計算すると、今2016年3月期においては、3社の中でもっとも配当利回りが低いかんぽ生命は約2.5%(今期予想ベース)で、残りの2社は3%台(同、2社は年2回配当なので下期配当を年換算)ということになる。3社とも東証1部の前期配当平均1.53%を上回るものの、驚くほどの高利回りではない。

2017年3月期以降の2期にわたって、日本郵政とゆうちょ銀行は、配当性向(1株益に対する配当の割合)50%以上、年2回の配当を予定している。かんぽ生命は、30~50%の配当性向、年1回の配当予定だ。

「成長性」は本当にあるのか

問題は、2017年3月期以降の配当額が増加するのか、それとも減少するのか。3社が高配当を続けるためには、上場後も安定した利益をあげ続ける必要がある。

特に、日本郵政グループの持ち株会社である日本郵政の先行きは不透明だ。同社の場合は、ゆうちょ銀行とかんぽ生命のほか、郵便・国内物流、金融窓口を手がける日本郵便、国際物流の豪トール社などで構成されるが、利益の大半はゆうちょ銀行とかんぽ生命に依存。この金融2社に対する日本郵政の持ち株比率は今後段階的に引き下げられるため、日本郵政の大きな減益要因となる。

日本郵政としては、物流部門に活路を見出したいところだが、ユニバーサルサービスの責務が課されていることもあり、日本郵便の郵便・物流事業は赤字。買収した豪州のトール社などに成長の望みを託すが、容易ではない。

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