さあ、問題は、「物価と賃金の好循環」は間違いであり、「物価が下がると賃金が上がる」ということを説明することである。
「物価と賃金の好循環」という間違いを捨てる
しかし、物価と賃金の好循環は、日本の一部の有識者が言っているだけで、世界ではほとんど聞かない。なぜなら、世界にはそんなものは存在しないからだ。本当は日本でも存在しない。理論上、存在しえないのである。存在しないものを追い求めているから永遠に実現しないのだ。だから、これを捨てる。
これはキャッチコピーのためではない。真実がそうなのだ。日銀は「現在の日本のインフレはコストプッシュによるものだ」という。だから、需要が強くてインフレになり、賃金も上げることができ、賃金が上がったので需要も旺盛となり、という好循環にはなっていないから、インフレ率が2%を大きく上回って3%超えが続いても、大幅な金融緩和を続けると説明する。
しかし、そうであるならば、永遠に物価と賃金の好循環というものは起きない。コストプッシュだから、企業の仕入れ価格は上がってしまう。それを売値に転嫁できたとしても、賃金は上げられない。
中小企業でコスト上昇を100%売値に転嫁できなければ、利益は減る。となれば、賃金を上げるどころか、下げることになる。あるいは利益を減らすかである。こうなると需要は旺盛になりようがない。
生活者にとっては、食料、電気、ガソリンと必需品のほとんどが大幅値上げとなっているから、実質可処分所得は大幅に減少。さらに需要は収縮する。これに対応して、労働者を慰めるために、賃金をインフレに対応して上げる。しかし、そうすると人件費が上がりインフレ率は高止まりする。コストプッシュによるインフレと賃金の悪循環である。しかし、これがインフレの標準的な姿であり、世界でも日本でも普通なのである。
実際に起こるべきことは、円安防止、反転により、輸入原材料のコスト上昇を抑える。その結果、コストプッシュのインフレは抑制される。すると企業の利益は増える。生活者の実質可処分所得も増える。生活は楽になり、需要は減らない。
となれば、企業は余裕をもって、賃金を上げる余力が生まれる。賃金を実際に上げるかどうかは、企業と働き手の力関係次第である。しかし、賃金を上げるためには、物価を下げる必要があるのである。そして、こうなれば、名目賃金は大幅上昇だが、物価上昇がそれを上回り、実質賃金の伸びは3年以上マイナスが続く、ということも起きない。物価が下がれば、名目賃金よりも実質賃金は高くなり、名目でプラスだから、必ず実質賃金上昇となる。
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