企業タイアップ型O2Oで新市場を拓いた「ケータイ国盗り合戦」《O2Oビジネス最前線・黎明期を迎えた新・消費革命》
しかし、通常ユーザーが地図を利用するときは、行きたい場所が決まっていてそこまでの行き方を調べる場合だろう。そのため、目的地までは通過点にしかならず、広告ビジネスが成り立たないという課題を抱えていた。
「行くときに使うツールではなく、行く目的自体を作りだせる媒体が必要だった。今でこそO2Oと呼ばれるようになったが、ゲームの構想自体が、O2Oのビジネスモデルで始まったといえる。これってO2Oっていうのか、といった感じ。マピオンの構造的な課題の答えが『ケータイ国盗り合戦』だった。ゲームのコンセプト自体がO2Oありきで始まったようなもの」と加藤氏は語る。
通常、携帯ゲームの収益の大部分は、ゲーム内の課金で成り立っているが、ケータイ国盗り合戦は違う。アイテム課金はまだ始めて1年ほどだ。アイテム課金があることでO2Oのサービス価値を高めることもできるため、今後はO2Oのタイアップとアイテム課金は五分五分に力を入れていくという。
地図情報提供会社からの「おでかけ」の提供でスタートし、「おでかけ」させることに成功した。現在は、行った先でユーザーが行う消費活動と絡めてビジネス化できないか、とさまざまな取り組みを模索している段階だという。
新しい取り組みの1つ、大丸松坂屋百貨店とのタイアップキャンペーン「大丸くにふだ漫遊記」は、大成功を収めた。
11年11月18~20日の東京店、11月25~27日の大阪梅田店で計6日間実施。紳士服・リビング雑貨売り場で買い物をすると、ゲーム上の仮想アイテムが獲得できる。3000人以上が参加。平均客単価は1万円以上だった。最高金額で16万8500円もの買い物をしたユーザーがいた。東京と大阪の両方に行ったユーザーは「新幹線代も大丸での買い物に使いたかった」と悔しがったという。
大丸松坂屋百貨店からはすでに次回の企画の要望が出ている。
加藤氏は、さらに次のO2Oの構想も練っている。
「旅行などはもちろん今後も力を入れていく。ただし旅行はやはり日常と懸け離れた特別な行動。利用頻度は当然低くなる。もっとぐっと日常に近づけるようにしたい。普段の買い物、ランチ、会社生活で行ういろんな行動。あらゆる行動の領域にゲームを通して消費を生んだりできるのではないだろうか。もっと身近な存在になりたい。買うとか見るとか、それぞれの行動に合ったサービスを、それはゲームに限らないかもしれないが作っていく必要がある。機能やコンテンツを強化していく」
将来的には、会員数1000万人を目標に掲げている。
「1000万人までの間に、どうステップを組むかが非常に重要。そのための施策を試行錯誤で練っている。そのときには、国盗りという1つのブランドだけではなく、多角的に考える必要があるかもしれない。いずれにせよ、ユーザーを大切にするのが必須条件だ。ユーザーに絶対納得していただけるやり方をとっていきたい」と加藤氏。
ネットとリアルを融合した魅力的な仕掛けで熱狂的なファンを育成する。ファンを核にリアル企業を巻き込んでいく。
ケータイ国盗り合戦は、O2Oビジネス成功の1つの“解”を示している。
(ITアナリスト・松浦由美子 撮影:大澤誠 =東洋経済オンライン)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら