新築マンションの「4戸に1戸」がタワマン、それでも供給が止まらないデベロッパーの懐事情

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まず都心部の広い土地を仕入れるには多額の費用がかかります。たとえば2000坪の土地を仕入れるのに坪500万円の土地であれば、土地代は100億円です。中小業者ではとても調達できるお金ではありません。

さらに容積率1000%、延床面積2万坪のタワマンを建設するコストは、建設費を坪180万円として360億円です。関連経費などを加えて費用合計は600億円くらいになります。この建物の住戸部分1万4000坪程度(1戸25坪として560戸)を坪600万円で販売すれば売り上げは840億円です。

利益は240億円(利益率28.5%)になりますが、こんな事業を行えるのは大手デベロッパーしかいないことはあきらかでしょう。

昨今は土地代に加えて建物建設費が高騰しているため、中小デベロッパーは窮地に陥っています。都心部はそもそも用地が少ないうえにタワマン用地など到底手が出せません。では郊外部でマンションを供給しようにも、建設費は都心部であろうが郊外であろうがあまり変わりません。

マンションの原価構成で土地代と建物代の比率はおおむね3対7から2対8です。建設費の大幅な値上がりで販売価格を上げざるを得ません。ところが、郊外で新築マンションを買う顧客層は一般庶民になります。価格の引き上げには限界があります。

建設費高騰でどうする中小業者?

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最近首都圏でも、千葉や埼玉と東京の周辺県で新築マンションの売れ行きが芳しくなくなっているのはまさに建設費の影響です。彼らは原価の上昇で「商売あがったり」の状態にあるのです。

そこで現在多くの中小デベロッパー、不動産業者が行っているのが大手デベロッパーの販売するタワマンの一部、たとえば十数戸をまとめて購入して顧客に転売するビジネスです。

大手デベロッパーでも、一棟で数百戸も千戸もあるマンションをさばくのはそれなりに大変です。少し値引きしてでもまとめて中小業者に卸してしまえば、販売は格段に楽になります。

中小業者は海外投資家などに売るルートはありませんが、一定の顧客層は持っています。そうした優良顧客に確実に売る(転売)ことで売上利益を確保できるのです。こうしたことはあまり知られていませんが、販売現場ではごく普通に行われています。まさに互いにウィンウィンの関係にあるのです。

牧野 知弘 不動産事業プロデューサー

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まきの ともひろ / Tomohiro Makino

1959年生まれ。東京大学経済学部卒。第一勧業銀行(現・みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループなどを経て三井不動産に勤務。J-REIT(不動産投資信託)執行役員、運用会社代表取締役を経て独立。現在はオラガ総研代表取締役としてホテルなどの不動産プロデュース業を展開。著書に『不動産の未来』『負動産地獄』『空き家問題』『2030年の東京』(河合雅司氏との共著)『空き家問題』『なぜマンションは高騰しているのか』(いずれも祥伝社新書)など。

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