米関税巡る官報記載に赤沢氏「説明と違う」…「口約束」のツケ表面化、時間切れ「一律上乗せ」懸念

米国が課す「相互関税」に関する米連邦官報の記載を巡り、日本政府の説明との食い違いが表面化している。関税協議のため訪米中の赤沢経済再生相は、米側に説明と修正を強く迫る構えだが、発動期限の7日が迫り、時間切れの懸念も強まる。(経済部 松本健太朗、ブリュッセル 秋山洋成)
赤沢氏は5日夜、ワシントン近郊で「合意前後を含めて米側の閣僚から聞いている説明と違う内容になっている」と記者団に述べた。日本政府の説明によると、もともと関税率が15%未満だった輸出品は一律で15%となり、15%を超える関税が課されていた品目は従来の税率が適用される仕組みで合意した。
ただ、トランプ大統領が7月31日に署名した大統領令と今月6日に米政府が公示した米連邦官報の「付属文書1」で、特例措置の対象としたのは欧州連合(EU)のみだった。日本については、単に相互関税として15%が上乗せされる記載となっている。
相互関税は、4月からほぼすべての国・地域を対象に一律分として10%が課されている。例えば、従来7・5%だった織物の税率は現在17・5%になっているが、日本政府の説明に基づくと、今月7日以降は15%になる。
一方、大統領令や官報の文面に従った場合、従来の7・5%に15%が上乗せされ、22・5%に引き上げられる可能性がある。日本は、2024年度に約22兆円に上った対米輸出の大半の品目に相互関税がかかるとみられ、建設機械から食品まで影響が及ぶ範囲は広い。
赤沢氏は今回の協議で自動車関税の税率引き下げの履行について、「できるだけ早くということを強力に働きかける」としている。5月に合意した英国の場合、トランプ氏による自動車関税引き下げの大統領令署名などを経て発効するまで2か月近くを要した。
国会論戦では、野党から「口約束」では合意の実現が危ぶまれるとの懸念が相次いだ。政府は日米双方で合意内容をまとめた共同文書の作成には否定的だったが、あいまいにしてきたツケがここに来て表面化した格好となる。ある政府関係者は「何のための交渉だったんだとなってしまう。しっかり詰めて約束を守らせないとだめだ」と話す。
米国とEUは首脳合意について共同文書を発表する予定だ。EU高官は5日、「首脳合意について、より詳細な内容を記載する。文書はほぼ完成しており、米国側の返答を待っている状況だ。可能な限り早く公表する」と説明している。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら