傾きマンション、問題はどこまで波及するか 全国で施工した過去3040件をチェック

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傾いた西棟(左側)と中央棟をつなぐ渡り廊下(撮影:今井康一)

これは急転直下の決定だったのか、実際に14日以前の説明会に出た住民は、「最初は建て替えの話なんて、まったくなかった。たまたま夜のテレビ放映を見てびっくりした」と振り返る。

三井不動産は全棟建て替えだけでなく、工事中の仮住まいにかかる費用や、希望者に対する個別買い取りも重ねて提案。基本的にこれ以上の補償はない満額回答といってもいい。欠陥住宅被害全国連絡協議会の幹事を務める河合敏男弁護士は、「法律上は補修・改修し、原状回復できた時点で、資産価値の毀損はないと判断される」と言う。

倫理上の問題はさておき、最低限、傾いた西棟のみ補修するという手もあったが、三井不動産は全棟建て替えに踏み込んだ。最終手段といえる提案がなされた以上、住民にできることは、その提案の完全実行を担保させることと、区分所有者の合意を形成すること以外にない。

無傷の北棟の存在が建て替えの障害に?

もっとも、同じ敷地内に複数棟を抱える“団地型マンション”の全棟を建て替えるためには、高いハードルをいくつも越えなければならない。まず全区分所有者および議決権のうち、5分の4の賛成が必要となる。さらに棟ごとにも3分の2以上の賛成を得なければならない。

ここで問題をこじらせそうなのが、現時点では“無傷”とされる、北棟の存在だ。北棟では、残り3棟でデータ改ざんを行ったチームとは別のチームが杭打ち工事を手掛けており、改ざんは行われていないとされている。

「(建て替えなくても)このままでいいと思っている」。北棟に住んでいるという女性は、周囲をはばかりながら足早に去った。北棟の住民にとっては、引っ越しなどの負担を伴う建て替えに賛成する動機は弱い、とも考えられる。

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