まさに弱肉強食、飼っている魚もときには生き餌に!?海洋生物学者が明かす、水族館「食」の凄い真実《水族館が100倍楽める話》
そしてなかには、人が与える餌を食べずに、すぐに死んでしまうような難儀な生物もいる。人気のウミウシなどがその例で、自然界で何を食べているのか皆目わからないものが多い。
だがその一方で、「まさか、こんな生き物が飼えるのか!」と驚くほど、餌に慣れる図太い生物もいる。
展示中に食われる子もいる!?
皆さまが水族館の水槽としてイメージする、数階吹き抜けの大水槽。沖縄美ら海水族館(沖縄県)の「黒潮の海」や、海遊館(大阪府)の「太平洋水槽」、あとはアクアマリンふくしま(福島県)の「潮目の海(黒潮側)」など、大体の水族館のメインコーナーとなっている。
淡水の水族館でも、アマゾン川やメコン川のコーナーには、ときに海水魚以上の巨大な水槽がある。当然、お客の多くが大水槽の前に足を止め、歓声を上げながら見上げている感じだ。
そんな大水槽の醍醐味は、何といっても大小さまざまな魚が泳いでいるところ。よくある黒潮系の水槽では、イワシ、アジ、サバ、そしてカツオやマグロ、ハタの仲間、サメ、エイ、さらにヒラメやタイの仲間まで混泳していることも。
それを見て、こう思わないか? 「アレ? このイワシとかアジって、マグロやサメの餌食じゃないの? 食われないの?」と。
答えは簡単、「ときには食われていますよ」だ。
これはマジな話で、イワシなどの小魚の群れに、時折アタックをかけているサメやマグロ、ハタが見られることがあるのだ。イワシの群れはそのたびに形を変え、逃げまどっているが、その中で食われている個体も間違いなく存在している。
ただし、“寄ってたかって小魚を食いつくしてしまう”なんてことはないので、ご安心を。
というのも、水族館の魚は当然、餌の時間に毎日、(死んだ)魚を餌として貰っている。目の前にある餌を放置して、わざわざ逃げる魚を襲うことにエネルギーを割こうとはしないだろう?
だから、餌を十分にやっている限り、小魚と大魚は混泳できるのだ。自然の摂理を感じる展示である(*)。
ただし、水槽に明らかに違和感のある小魚やエビなどが入っていたら、それは先ほど言及した“活餌”である可能性が高い。つまり展示ではなく、活餌として入れられたってことだ……。
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