「こんなだったっけ?」「喪黒福造がやや可愛らしい」実写版『笑ゥせぇるすまん』に賛否も、毒気が“あえて抜かれている”理由
昔の名作をそのまま時代だけ変えて実写化するのではなく、現代の人間の欲望とその顛末をどう捉えるか、名作をリスペクトしながら作家がそれぞれ腕を振るう。
その中で、今はみんな社会的に何か報いを受けるようなものを好まないから、落とし方は難しいのかなという気もした。失ってばかりの40年、これ以上報いを受けるような話はしんどすぎるのかもしれない。
ブラックユーモアというよりは軽味のあるコント寄りなのは、このような社会の変化もあるだろう。また、芸人のロバート秋山がセンターで、作家4人が喜劇を得意としているため、おのずと“ロバート秋山劇場”のようになる。
「モグリズム」を歌って踊るロバート秋山は、喪黒福造のイメージからだいぶ離れている。だがそのほうが現代の若者は親しみを持てそうだ。正直、私が若い頃、『笑ゥせぇるすまん』は書かれていることの鋭さはわかりながらも、喪黒福造のクセが強すぎてちょっと苦手だった。そういう人には見やすい。

仲間由紀恵の“黒い光”にも注目
歌って踊れるエンターテイナー喪黒福造の誕生で、『笑ゥせぇるすまん』の原点に当たる人もいるだろう。そういえば2001年より実業之日本社の『コミック伝説マガジン』と『漫画サンデー』で喪黒福造が復活したことがある(不定期連載)。
そのときは『踊ルせぇるすまん』というタイトルだった。歌って踊る喪黒福造はそのタイトルのオマージュかもしれない。
1話完結のオムニバスだが、1〜4話、5〜8話で続けて見るとそこにコンセプトがあるような印象も受ける。8月1日から配信される第9〜12話でもインフルエンサーやサブスクといった現代的な題材が取り上げられている。
人気シリーズ『TRICK』で堤幸彦の批評性のあるユーモアを見事に体現していた仲間由紀恵が、『笑ゥせぇるすまん』ではどのように黒い光を放つか楽しみだ。

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