「こんなだったっけ?」「喪黒福造がやや可愛らしい」実写版『笑ゥせぇるすまん』に賛否も、毒気が“あえて抜かれている”理由
「夢の一発屋―モグリズムI―」は宮藤官九郎のオリジナル。夢グループの社長・石田重廣(本人)は喪黒福造から誰が歌っても絶対にヒットする楽曲「モグリズム」を提供される。
保科有里を筆頭に、実在の所属タレントが登場し、よくいえば虚実皮膜。悪く言えば、疑惑。つまり、夢グループはこのドラマのスポンサーか何かなのだろうか、ドラマの主題歌「モグリズム」をヒットさせたいというプロデューサー側の思惑がこういうエピソードを書かせたのだろうか、という疑惑が湧く内容だ。
なかなか謎の一作であるが、見事に夢グループと「モグリズム」が脳裏にこびりついてしまった。

さらにダメ押しのように、第7話 「地下アイドル―モグリズムII―」(脚本:マギー)も、「モグリズム」ネタ。プロデューサーの森コミスギー(髙嶋政伸)は、自身がプロデュースしている地下アイドルをもっと高みへのぼらせるために盛り込みまくっていた。
そんな彼に喪黒福造が「モグリズム」を歌わないかと提案、あわせて売れる秘技を伝授する。高嶋は昭和生まれ、かつ昭和の作品を通ってきている俳優だからか、藤子不二雄Aらしい、昭和の漫画の墨汁で塗られた濃くて黒ぐろとした、ベタ塗りされたキャラクター感がよく出ていた。
ブラックが控えめになった理由
全12話の真ん中となる第5〜8話はオリジナルで、令和の時代らしい題材を選んでいるように感じる。夢グループは昭和の会社だが、実在の人物を虚構に登場させることや、地下アイドルは少なくとも2000年代のカルチャーだろう。
第7話の「デトックスヒロイン」(脚本:マギー)のテーマは、裏アカ。ただ、第8話「借りパクの泉」(脚本:宮藤官九郎)はタイトルどおり借りパク――借りたものをなかなか返さない人にモノを貸してなかなか返してもらえない貸作公平(中川大志)の描き方には普遍性があった。
貸し借りのアイテムが紙の漫画ではなく、モバイルバッテリーやゲーム機器のガジェットであるところがいまどき。
また、モノの貸し借りの問題ではなく「返して」とはっきり言えない、人間関係に軋轢を作りたくないという気苦労を抱えた現代人のしんどさは物語を複雑にする。
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