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目を見張る大阪・関西万博パビリオン、"異形の美"を支えるのは『魔法の膜』。 東京ドームも生んだ太陽工業が挑む「やわらかい建築」の凄み

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  • 川下 和彦 quantum代表取締役社長兼CEO/クリエイティブディレクター
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このように膜が薄くても熱を逃さず、光を吸収する方法を考えるほか、ここで紹介したETFE素材に関しても、燃えやすいと建築に使うことができないため、透明の繊維を膜材の中に入れて燃えにくくするなど、二律背反する条件をクリアすることで太陽工業は膜技術を大きく発展させてきた。

膜は「平和の象徴」

膜は環境負荷を軽減するだけではない。膜があれば、世界はもっとやさしくなると能村社長は続ける。

「膜は、ただ薄くて軽い素材というだけではなく、“やさしい”素材なんです。膜は紫外線や雨から人間を守ってくれることはもちろん、曲面をつくって空間をやわらかくするので、人間をやさしい気持ちにしてくれると思っています。

例えるなら、服はみんなを守ってくれますよね。おしゃれもできるし、そもそも服を着ていないと不安じゃないですか。人間が自分の体を守りたいと思うのと同じで、建築物を膜で包んであげることによって、安心できる空間をつくることができます。

素材を替えれば、建築物にパジャマのようにやわらかい膜を着せることもできますし、スーツのようにパシッとしている膜を着せることもできるわけです」

世界的な建築家である隈研吾氏が、豪雪地帯の新潟県長岡市に「モクマクハウス」をつくったように、同氏はしばしば「膜(マク)と木(モク)は人間に近い存在」だと言及している。そこに、能村社長が自身の思いを加える。

「人間は、戦争するときに『鎧(よろい)』を着ますよね。状況によっては、鎧のようにがっちりしている建築が必要かもしれません。しかし、私たちが得意なのは、戦うのではなく、鎧を脱ぎ捨て、安心して生活できるような空間をつくり、ガチガチになっているところをやわらかくしていくことなんです」

ずっと膜に注目していると、戦争が起きている地域は守りを固めるために膜が少なく、戦争をしていた地域が平和になるにつれ、膜が増えていくことに気づくと能村社長は言う。膜は、平和の映し鏡なのかもしれない。

最後に、能村社長に、今後の展望について聞いた。

「ETFE膜やミラー膜など、今回の万博で生まれた技術、進化させた技術は、今後も積極的に使っていきたいです。また、来年は北米ワールドカップがあるので、スタジアムの建設を進めています。

国内では、大規模な国際博でもある横浜園芸博があります。2030年には、総事業費1兆円を超えるサウジアラビアのリヤド万博が控えているので、すでにその準備も始めています」

さらに、能村社長は、太陽工業の膜の研究・開発から設計・施工にとどまらず、太陽グループとして、施設運営を含めたソフト面でも、膜のようにあたたかくやわらかいサービスの提供にも注力していきたいと考える。

「実は、1970年の万博と今回の万博の違いは、膜をアップデートしただけではありません。前回は太陽工業単体でしたが、今回は太陽グループとして万博に参画しました。

具体的には、グループ企業が、膜だけでなく、日本館をはじめ複数のパビリオンや施設の中のサービスに携わっています。太陽グループとしては、今後もハードのみならず、ソフトでも膜のようなあたたかさややわらかさを届けていきたいと考えています」

(写真:梅谷秀司撮影)
【この記事の写真】「膜」を使った万博のパビリオンの数々など(8枚)

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