目を見張る大阪・関西万博パビリオン、"異形の美"を支えるのは『魔法の膜』。 東京ドームも生んだ太陽工業が挑む「やわらかい建築」の凄み

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それから55年の時を経て、今回の大阪・関西万博でも、太陽工業は20以上のパビリオンや施設に膜材を供給し、テントの花を咲かせている。工期を終え、大阪で万博が賑わっている今、能村社長は準備から開幕までを振り返ってこう語る。

「今回の大阪・関西万博を迎えるにあたって、社長としては、1970年の大阪万博を超えることを成し遂げなければならないという使命感がありました。

我々の会社には、万博の開催ごとにプレッシャーがきますが、前回を超えようと挑戦し、困難を乗り越えることで、そのたび会社として成長しているように思います。

膜という観点で言えば、前回の万博にはなかった、軽量で透明性が高く、耐候性や耐薬品性に優れたETFE(エチレン・テトラフルオロエチレン共重合樹脂)膜、鏡のようなミラー膜、大阪ガス様が出資しているSPACECOOL社が開発し、当社が評価・検証に協力した宇宙に熱を逃がす放射冷却膜といった新しい素材のほか、かつてない西陣織の膜をつくることができました」

能村社長
(写真:梅谷秀司撮影)

ETFE膜を使った大阪ヘルスケアパビリオン、ミラー膜を使った落合陽一氏プロデュースのシグネチャーパビリオン「null²」、放射冷却膜を使ったガスパビリオン、西陣織膜を使った飯田グループホールディングスと大阪公立大学の共同出展館など、その裏側を支えている膜の秘密を知ることで、パビリオンや施設のコンテンツを体験するだけでなく、膜の最先端の技術を知る楽しみや、膜の芸術的な造形美を鑑賞する楽しみができるだろう。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館
飯田グループHLD×大阪公立大学共同出展館は、太陽工業が世界で初めて開発した西陣織膜をまとっている(写真:飯田グループ提供)

新素材を汎用素材に

口で言うのは簡単だが、実際に新しい素材を生み出し、実用化するのは簡単ではない。その背景には、太陽工業の並々ならぬ試行錯誤の足跡がある。

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