故・山崎元氏が最も信頼した個人投資家が語る、投資が「大人の嗜み」から「必修科目」になった時代でも変わることのない《投資の基本的な原則》
投資は「やりたい人がやるもの」「ギャンブルが好きな人がやるもの」という位置づけだった。実際、私自身も投資を始めた当初は、投資をしていることを周囲に話すのをためらっていた。「投資家=変わり者」というレッテルを貼られることを恐れていたからだ。
いまでもまわりに投資家がゴロゴロいるわけではないが、この25年間で投資に対する社会の見方は劇的に変わった。
新入社員が「iDeCoとかNISAとか、どれから始めたらいいんですかね?」と当たり前のように相談してくる時代になった。書店の投資本コーナーも昔の数倍に拡大している。
YouTubeには投資チャンネルが無数にあり、投資系インフルエンサーが何十万人ものフォロワーを抱えている。隔世の感がある。
デフレという「ぬるま湯」の時代
当時はまだデフレまっただなかで超低金利という、いま振り返ると極めて特殊な時代であった。
日本は「失われた10年」の真っ只中にあった。消費者物価指数は1998年から2005年まで7年連続でマイナスまたは横ばいが続いた。政策金利は0.5%を下回る異常な低水準で推移し、2001年には史上初のゼロ金利政策が導入された。
この環境下では、余剰資金は現金として保有しているだけで、物価は下がり現金の価値は相対的に上がっていくという、まさに「現金最強」の時代だった。
たとえば、2000年に100万円の価値があった商品が2005年には95万円で買えるようになる。つまり、タンス預金をしているだけで実質的に資産価値が増えていたのだ。
銀行の普通預金金利は0.001%程度だったが、物価下落率がそれを上回るため、実質金利はプラスになっていた。したがって、リスクを取って投資をしなくても、現金を持っているだけで購買力は維持どころか向上していたのである。
このような環境では、投資は確かに「興味がある人が自己責任で行うべき大人の嗜み」という位置づけで問題なかった。現金で持っていれば実質的に価値が増えるのに、わざわざリスクを取って投資をする必要などなかったからだ。
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