「二度も幻と化した」広島と島根を結ぶ鉄道の謎 山あいに並ぶ2つの橋、どちらにも列車は走らず
結局、今福線の工事は再開されることなく幻の鉄路に。新旧二つの橋梁が並ぶ佐野地区はじめ、現在の浜田市内各地でトンネルや橋梁が多数うち捨てられることになってしまった。
一方、可部線は国鉄分割民営化でJR西日本が引き継ぎ、横川―可部間は広島都市圏の通勤路線として発展。しかし山間部の可部―三段峡間は利用者が少なく、2003年に廃止されてしまった。

可部―浜田間の廃止から5年後の2008年、土木学会が今福線の旧線上に残されたコンクリートアーチ橋を、選奨土木遺産に認定した。「未完成に終わった鉄道のコンクリートアーチ橋が一群として現存し、山間の景観に溶け込みながら、悲運な歴史を伝えている」という理由からだった。これを機に浜田市は「幻の広浜鉄道今福線」と題し、残されたコンクリートアーチ橋などを観光資源として活用するようになった。
「土木遺産」認定で観光資源に
浜田市は市内各地に残る遺構の位置や見どころなどをまとめたガイドマップを作成するとともに、現地に案内板や休憩用トイレを整備。地元有志によるガイド団体も設立された。
安全上の問題から立入禁止のトンネルや橋梁もあるが、ガイドが同行する場合やウォーキングイベントの開催日は立ち入れる場合がある。今年2025年2月に開かれたウォーキングイベントでは県内外から約170人が訪れたという。

ちなみに可部線は2017年、戦後に開発された住宅団地へのアクセス向上を図るため、可部―あき亀山間が延伸開業している。わずか1.6kmの延伸だが、建設に際しては2003年に廃止した区間の路盤を活用しており、いわば「二重の開業」だ。
新しい終点・あき亀山駅の利用者数(1日平均の乗車人員)は2017年度が554人だったのに対し、2023年度は1.8倍の997人。順調に推移していて問題はなさそうだが、今度ばかりは「二重の廃線」にならないことを切に願う。

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