がん治療の効果を高め、予後を改善する「栄養治療」とは?「特定の食べ物だけをとる」とはまったく違う、新しい考え方《専門医を取材》

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大原さんも、「そのままだと甘みが強くて飲みにくいバニラ味などのONSドリンクも、凍らせてアイスのようにすると食べやすいという人もいます」とアドバイスする。

買い物や料理ができないときは?

抗がん剤治療中は食欲不振や体重減少のほか、倦怠感に悩まされることもある。「倦怠感で動くことも困難で、買い物や調理ができない」という日のアドバイスも聞いた。

「レトルト食品や冷凍食品、お惣菜や外食などの利用を。調子がいいときに多めに作り、小分けにして冷凍保存しておくなど、小さな工夫が日々の大きな助けになります」と犬飼医師。大原さんは、「本当にしんどいときには無理せず、家族に頼ることも必要」と話す。

家族だけでは支えきれないという状況では、介護保険制度の活用も視野に入れたい。

介護サービスは65歳以上の高齢者だけでなく、40歳以上で末期がんと診断された患者も利用できる。デイサービスでの食事提供、配食サービス、ヘルパーによる調理サービスや買い物代行などを組み合わせることで、食環境の整備がしやすくなる。

こうした制度をうまく使えば、患者本人や家族の負担を減らしながら、無理なく栄養治療ができるそうだ。

こうした、がん患者の栄養治療は実際、どの程度、全国の病院で実施されているのだろうか。

前出の比企医師によると、医師、管理栄養士、看護師、薬剤師などの多職種連携で栄養治療を行う「栄養サポートチーム(NST)」は、すでにほとんどのがん患者を診ている病院に存在し、普及が進んでいるという。

ただし、専任のスタッフの不足や、回診の頻度が限られているといった課題もある。「栄養治療の重要性が制度上も認識されるようになった今こそ、医療現場の体制強化が求められています」と比企医師は訴える。

さらに、現行制度ではNSTの関与は入院患者限定だ。昨今はサポートが手薄になりがちな外来患者こそNSTの関与が必要だという見方もある。

「外来の患者さんは、治療を生活と並行して続けています。継続的な栄養治療が求められるにもかかわらず、外来には栄養治療の支援が入りにくいのが現状。本当は外来こそNSTが必要だと感じています」(犬飼医師)

栄養は、がん治療の根幹を支えるインフラ的な存在だ。薬や手術と違い、栄養はその“効き目”がすぐには見えにくいが、確実に治療成績や患者のQOL(生活の質)に影響を及ぼす力を持っている。

「がん治療中の栄養治療は薬と同じくらい大切です。『体重チェック』と『食べたいときに、食べたいものを、食べられるだけ』を合言葉に、積極的に栄養治療を取り入れてほしいと思います。困ったら気軽に管理栄養士や主治医に相談してください」(犬飼医師)

石川 美香子 医療ライター

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いしかわ・みかこ / Mikako Ishikawa

『メディカル朝日』など医療者向け出版物の編集者を経て、ライターとして『手術数でわかるいい病院』など医療系ムック・書籍の制作に携わる。全国の病院や医師を多く取材。

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