がん治療の効果を高め、予後を改善する「栄養治療」とは?「特定の食べ物だけをとる」とはまったく違う、新しい考え方《専門医を取材》

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では、どうやって取り組むのか。そのポイントは体重測定だという。

犬飼医師は、「毎日の体重測定で5%の減少を見逃さないでください」と強く訴える。GLIM基準で低栄養リスクを示す低体重の指標は、「過去6カ月間に5%以上の体重減少」だ。

ちなみに、5%の体重減とは体重60キロなら3キロに相当する。

このレベルの体重減少は、見た目でほとんどわからず、自覚症状もない。ただ、これを放っておけば体重はどんどん落ちて、免疫力や筋力の低下を招き、治療に支障をきたすまでに至ってしまう。

犬飼医師は「過去1カ月で体重が5%減っていたら、それは早急に栄養治療の必要ありのサイン。見た目ではまず気づきません。がんの治療中は体重をこまめに計って、数値で把握し、5%以上の体重減少があれば、早めに主治医や医療スタッフに相談してほしい」と呼びかける。

食べられるときに、何でもいいから食べる

岡山済生会総合病院でがん患者の栄養指導を担当する管理栄養士の大原秋子さんは、患者自身が自宅で栄養対策をとるときのコツは、「食べたいと思ったときに、すぐ食べられる食材を常備しておくこと」と語る。

「食べたい気持ちのタイミングを逃さないことが大事です。せっかく食べたいと思えても、調理している間に食べたくなくなってしまうこともあります。レトルト食品や冷凍食品でもいいので、食べやすく、すぐに口に入れられる好みの食材を常備しておくと安心です」(大原さん)

抗がん剤治療の影響で味覚が変化し、「白いご飯が食べにくい」という訴えも少なくないという。ご飯などの主食(穀類)は、摂取カロリー全体の半分を占める重要なエネルギー源のため、体重維持には欠かせない重要な栄養素だ。

「白米はダメでも『赤飯や寿司飯なら食べられる』という患者さんもいます。パンや麺類のほか、いも類も主食になるので、焼きいもが好きならそれでもOK。自分が食べやすい主食を見つけてほしいです」(大原さん)

がん治療中に原則、食べてはいけないものはない。刺身や生の野菜、果物、少量であればアルコール類も問題ないという。スプーン1杯のアイスやゼリー、ひと口サイズのおにぎりでもいいので、とにかく「食べないより食べる」を心がけたい。

食事がとりにくいときには、経口栄養補助食品(ONS)の活用も有効だ。

最近では、ドリンクやゼリー、スープ、アイスタイプなど、形状や味のバリエーションも増えており、1回100~200mLぐらいの少量で高栄養を摂取できる。医師から処方される場合もあるが、ドラッグストアなどで購入もできる。

犬飼医師は、「『食べたいときに、食べたいものを、食べられるだけ』が基本です。食事をストレスに感じないようにしましょう。ONSは昔とは全く違うので、1度試してみる価値はあります。継続的に摂ることができれば、栄養改善につながります」と話す。

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