国立がん研究センター院内保育所の事業者選定で、嘉山理事長宛に園児の父母が「公開質問状」

事業者選定をめぐる“疑惑”が表面化したのは1月10日。同センターで開催された受託事業者の選定入札時のヒアリングの席上だった。その場で嘉山理事長は、「今回、入札をわざわざしなければならない理由は、今入っている業者(=ピジョン)が(夜間を含む)24時間保育をやらないというから。それで入札をすることに決めた」となどと発言。「(24時間保育を)やってと頼んだのにやらないというから、入札をやらざるをえない」と繰り返した。

だが、入札に参加したことでわかるように、現在の事業者であるピジョンは「やらない」と言ったわけではなかった。入札でピジョンの担当者は「(24時間保育の)準備させていただく」と発言。すでに東病院では24時間保育を実施している(中央病院では未実施)。

しかし、嘉山理事長は「ピジョンはやる気なし」と断定。「保育環境が激変しかねない」との父母の懸念を振り切る形で競争入札を断行し、応札した3社のうちで最も低い金額を提示したアート社が落札に成功した。

公開質問状は嘉山理事長とアート社との関係についても疑念を呈している。質問状では「アート社が地方で展開する事業所の1つにすぎない山形大学医学部付属病院の院内保育所の施設長が出席していたことには違和感を感じざるをえない。実際、施設長はプレゼンテーションで発言しておらず、貴職(=嘉山理事長)とアート社とのつながりを印象づける意図があるのではないかと疑念を持たれかねない不自然なものです」とも記している。

嘉山理事長はがんセンタートップに就任する2010年4月以前、山形大医学部長を務めており、同医学部が開設した院内保育所の運営事業をアート社が担っていた。嘉山氏は医学部長時代に、保育所長も兼務していた。

こうした経緯に加え、アート社へのヒアリングの際に嘉山理事長は「(アート社は)山形ではよくやってくれたと思うんだけど。オンコール(必要なときに保育士を呼び出して夜間保育を行うこと)をね」と発言。その一方で別の企業によるプレゼンテーションでは、「(あなたの会社が)情熱的なのはいいんだけど、具体性がないと何の担保にもならないんだよ。やるぞと言っても、戦前の日本と同じでみんなおっ死んじゃうだけだよ」などと同社に委ねることに否定的とも思えるようなコメントを述べていた。

保護者が事業者選定の経緯に疑念を抱いたのにはほかにも理由があった。入札のプレゼンテーションでアート社は「食材のアレルギーへも当然対応いたします」と述べていたが、その後の保護者との話し合いの場では「対応できない。アレルギーのお子さんは弁当を持参してほしい」などと発言。

「従来の保育内容を尊重することが条件ではないのか」との保護者からの指摘を受けて最終的には「アレルギーのあるお子様には個別に対応いたします」とアート社は「入園のしおり」で明記したものの、「栄養士の配置が新たに必要」であることを理由に、委託費の増額をがんセンターに求めているもようだ。

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