「世代で若者を論じることに意味がない」。そう断じる前に知ってほしい「一般化」の本当の意味
ここで若者論に通じる本書のスタンスを表明しておきたい。若者や時代について語るとき、個体の特性だの行動だの割合だのにのみ着眼するのでなく、背景にある構造を読み解くべきだという前提だ。実際にネクタイをしている人は多数派とは言えなくなっているにもかかわらずネクタイに一般性を感じることができるのは「ネクタイをする」社会構造があまりに一般的だからである。
一般性には複数の意味がある。想定する母集団内における割合という「普遍性」を念頭に置くのが統計的一般性である。加えて「そういう話ってあるよね」と容易に想起できること、社会的な象徴性もまた一般性と呼べるはずだ。
SNSの一般性
もうすこし例を挙げよう。若者を象徴するツールにSNSがある。最近の若者はSNSを使うから…という言説に、一般性だのそんな若者は存在しないだのと言う人はいないだろう。
サイバーエージェント社が2024年のZ世代(16~25歳)のSNS利用率を調査している。曰く、Facebookを除くすべての対象SNSにおいてZ世代の利用率は他世代を上回る。「Z世代は他世代よりもSNSを利用している」ことは事実と言えそうだ。
とはいえ1位のYouTubeでも(YouTubeはSNS扱い)、Z世代利用率は86.3%である。7~8人に1人は観ていないのだ。続いてInstagramが74.0%、Xが70.8%。この3つで「利用率三傑」である。次点がTikTokで54.8%。5位のBeReal.で21.4%とガクッと落ちる。ちなみにInstagramとTikTokは性差が比較的大きく女性のほうが利用率が高い。
利用率だけで言えば、若者がSNSを普遍的に利用しているとは言い難くもあるのだ。少なくとも9割9分ではない。にもかかわらず、われわれは若者のSNS利用について一般性を疑わない。SNSに象徴としての一般性があるからだ。
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