温泉エネルギーを電気に転換--神戸製鋼の新型発電装置が大分・湯布院の温泉旅館に初導入
温泉のエネルギーを電気に転換する--。神戸製鋼所が昨年秋に発売した「バイナリー(2元)」と呼ぶ新しい方式の小型発電システムが、本格的な実用段階に入った。大分県由布市の温泉旅館が導入を決定したのだ。
導入第1号となったのは、大分・湯布院の温泉旅館「ゆふいん庄屋の館」(大分県由布市)。出力100kW以下の発電システムが地熱・温泉発電に利用されるのは国内初。ほかにも九州や北海道中心に引き合いも多く、間もなく決まる再生可能エネルギーの買い取り価格次第では需要が膨らむ可能性もある。
今回受注が決まったのは、「マイクロバイナリー(MB-70H)」と呼ぶ高効率で小型の発電システム。神戸製鋼が得意とする圧縮機の技術を活用したもので、温水など熱源系統と、発電過程での発生ガスを凝縮器で液化させ再利用する2元(バイナリー)方式となっているのが特徴だ。昨年10月の発売以来、これまでに約350件に上る問い合わせがあったという。
小型であるため、傾斜地に多い温泉でも設置でき、また、80℃程度の低温でも発電が可能な点も強みだ。蒸発器で発生した蒸気の力でタービンを回すが、世界初となる半密閉のスクリュタービン方式を使うため、エネルギーロスが少なく、安定的に高効率な発電ができる。このタービン自体では72kWの出力があるが、再利用のためポンプを動かすため出力は60kWに減り、さらに冷却水の循環ポンプやファンの動力源にもするため、システムとしては50kWの発電出力となる。「ゆふいん庄屋の館」では全量売電の計画という。
引き合いが多いのは、圧倒的に九州。ついで、北海道だ。ただ、東北、甲信越や近畿圏も含め、引き合いは350件にものぼる。発電コストは20円/kW程度。工場の排水でも使用でき、状況によっては、同コストは10円/kWまで下がるという。いずれにしても、今後の焦点となるのが、再生可能エネルギーの買取価格。温泉旅館が10年で投資を回収できる25円を超えてくれば、一気に普及が進むと神戸製鋼では期待する。
工事や周辺機器を除く1ユニットの単体価格は2500万円、2015年に100台を超す30億円が当面の目標となる。小型蒸気発電機(スチームスター)など同社が強みとするエネルギーソリューション分野でラインナップが拡がっている。
(山内 哲夫 =東洋経済オンライン)
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