ゆうちょ銀行と日本郵便、「相互依存」の矛盾 銀行株の売出価格は仮条件上限となったが・・・
このうち「貯金関連手数料」は、日本郵便が取り扱う郵便貯金の平均残高に料率を掛けたもの。料率は、ゆうちょ銀行直営店での業務コストをベースに算出される。「送金等手数料」や「資産運用商品関連手数料」も、日本郵便が取り扱う送金等件数や資産運用商品販売額に、ゆうちょ銀行直営店での業務コストをベースに算出された単価や料率を掛けて算出される。これら3つの手数料は、業務の量に応じた算定になっているので、ある程度の透明性はあると評価できる。
しかし、最大額を占める「窓口基本手数料」は、「当行の管理会計により毎年算出した単位業務コストに日本郵便での取り扱い実績を乗じた額を算出し、その中から、郵便局ネットワークの確保のために、郵便局維持にかかわるコスト(日本郵便の管理会計による当行委託業務配賦分)」として、支払っているのだという。
わかりにくい表現だが、要は郵便局を維持するためのコストの一部をゆうちょ銀行が負担しているということである。
郵便局の維持コストを間接的に負担
郵便局の大半を持っているのは日本郵便。その日本郵便には、ユニバーサルサービスの責務が課されている。あまねく全国において公平に、郵便や貯金、保険などのサービスを利用できるようにする責務があるのだ。利用者が極めて少ない過疎地であっても、サービスを提供しなければならない。採算だけに基づいて過疎地の郵便局を閉鎖するようなことはできない形になっている。
ゆうちょ銀行は、そうしたユニバーサルサービスの責務を課されていない。しかし、「窓口基本手数料」の定義からいえば、ゆうちょ銀行も、ユニバーサルサービスのコストの一部を間接的に負っていることになる。
日本郵便は主力の郵便・物流事業セグメントの営業損益が赤字。ゆうちょ銀行やかんぽ生命からの手数料収入で補って、トータルでは営業黒字を確保しているものの収益性は低い。今後、郵便物が一段と減少するなどして郵便・物流事業の収益性が悪化したとき、「郵便局維持」の名目で、ゆうちょ銀行が日本郵便に支払う手数料が引き上げられる可能性も否定できない。
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