400人しか読まなかった記事で訴えられたワケ 無名の環境活動家がなぜ、狙われたのか

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ケムリスクはその後、名誉棄損でフォイリンとサベージを提訴した。だが、ウォール・ストリート・ジャーナルに対しては同様の訴訟は起こさないようだ。

ニューヨーク・タイムズの質問に対しケムリスクは声明を発表し、ウォール・ストリート・ジャーナルを提訴しないのは、同紙の編集長宛に送った書簡が掲載されたことで、「事実関係が明確にされた」からだとした。

なぜ今になって?

だが、ケムリスクは書簡の掲載からだいぶたった後に記事を撤回するか修正するようウォール・ストリート・ジャーナルに要求しているようだと本紙記者が告げると、態度を変えた。

「もしウォール・ストリート・ジャーナルが記事を掲載してから11年近くたった後も、当社の信頼を傷つける虚偽について対処せざるを得ないとわかっていたら、間違いなく2005年に同紙を提訴していただろう」と、ケムリスクの弁護士クレアは声明で述べた。

ケムリスクが10年前にウォール・ストリート・ジャーナルに送った書簡は、同紙の記事によって経済的、風評的な損害を受けていると訴えており、それは同社が現在、フォイリンとサベージに対して起こしている訴訟で主張していることと共通している。

ウォール・ストリート・ジャーナルの記事によって「当社の収益に何百万ドルという損害がもたらされており、許されるものではない」と、ポーステンバックは2006年に書いている。「記事の撤回もしくは修正がされるべきだ」

争点は州法で保護される対象かどうか

フォイリンとサベージの公判では、2人がマサチューセッツ州の反スラップ法で保護される対象かどうかが議論されるだろう。それは彼女たちの行動がジャーナリストとしてなのか、活動家としてなのかに左右される。

裁判資料によれば、州法は2人には適用されないとケムリスクは主張しており、その最大の理由として、州法で保護されるのは地元の議会で諮られる事柄など公共政策の決定に直接関与する人物に限られるとしている。

現在ニューヨーク市立大学でジャーナリズムを学んでいるサベージは、彼女とフォイリンが記事を撤回してソーシャルメディア上で謝罪すれば訴訟は取り下げるとケムリスクから申し出があったものの、拒否したと語った。2人の態度が変わることはなさそうだ。

「彼らは私から何でも取り上げられると思っている」とフォイリンは言う。「私が持っているのは住宅ローンと1999年型のシボレー・サバ―バン、それに6人の子供だけよ」

(執筆:BARRY MEIER記者、翻訳:前田雅子)

(c) 2015 New York Times News Service)

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