意志が弱いからでも、怠けているからでもない…。「つい先延ばしにする人」が変わる意外な方法
たとえば、知らない町に引っ越す、初めましての人と会話する、新しいスキルを学び始めるといった行動には、エネルギーの消費や不安、未知への緊張といった心理的負荷がかかります。
つまり、行動自体が難しいのではなく、始めることが難しいのです。
このように、脳は新しい行動を前にすると、負荷や不確実性を感じて無意識のうちに先延ばしを選びます。
行動のハードルを下げる方法
こうした行動のハードルを下げる方法の一つが、「他人の真似」=「TTP(徹底的にパクる)」です。
ペンシルベニア大学のメーアらは、1000人以上を対象にした研究で、運動習慣がある人の行動をそっくりそのまま真似したグループが、もっとも高い確率で自分自身の目標達成に成功したことを報告しています。まるでコピペするように行動を写すことで、初動の負担が軽くなったのです。
この背景には「ミラーニューロン」と呼ばれる神経細胞の働きがあります。
これは、他人の動作を見るだけで、自分が同じことをしているように脳が反応する仕組みです。つまり、うまくいっている人のやり方を見るだけで、脳はすでに行動準備を始めているのです。
もう一つ、行動のスイッチを押すうえで効果的なのが「環境」です。
はじめにでもお伝えしたように、ラッセル・A・ポルドラックの著書『習慣と脳の科学』では、「新しい習慣を築くことに成功した人は、そうでない人に比べて引っ越しの経験が3倍多い」というデータが紹介されています。環境の変化が、習慣や行動パターンの再設計を促すのです。
つまり、行動を変えるには自分の意志を鍛えるだけでは不十分であり、外部のきっかけや仕組みの工夫が重要なのです。
この観点から特に注目されているのが、行動経済学の「ナッジ理論」です。
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