不動産の相続で生じる「不公平」、子どもを困らせる親の「勝手な」思い込み。《兄弟姉妹は仲が良いから大丈夫》で共有名義→トラブルの温床に

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②「遺言書があるから大丈夫」

遺言書があればすべて解決する、と思われがちですが、実際にはそうとは限りません。遺言書がある場合、遺産分割協議書(誰が、何を、どれだけ相続するかを決める書面)は基本的に不要です。

しかし、遺言書の内容に納得しない相続人が出てきた場合、話し合いの結果として、遺産分割協議をやり直すことになるケースもあります。その間、遺産は共有財産のままとなり、換金や納税ができない状況が続く可能性があります。

さらに、相続税の優遇措置(配偶者控除、小規模宅地の特例、取得費加算の特例など)は、期限内に手続きを終えなければ受けられません。話し合いが長引けば、これらの特例が適用されなくなる可能性があります。

また、納税期限を超えれば延滞税もかかります。その結果、兄弟姉妹の関係がさらに悪化することもあります。

「子どもたちで話し合えば大丈夫」ではない

③「子どもたちの代で話し合って決めればいい」

「子どもたちの代で話し合って決めればいい」という考えも、結果的に「問題」や「争いの種」を残すことになりかねません。譲り合いができれば良いのですが、お互いに「ここは譲れない」と主張する場面が出てくると、意見がぶつかり、収拾がつかなくなるかもしれません。

たとえば、一棟収益マンションがあり、親が「子ども2人の共有名義で持ち続けてもいいし、売却して現金で分けてもいい」と考えていたとします。ところが、相続時に長男が「売らずに持ち続けたい」、次男が「売って現金化したい」と意見が分かれたらどうなるでしょうか。

話し合いがまとまらない場合、長男が単独で相続し、代償分割という形で次男に現金を支払う方法が取られることがあります。しかし、この方法にはリスクが伴います。

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一括で支払えるだけの現金が手元にあればいいですが、相続税を払った後に十分な現金が残っていない場合、分割払いで支払うことになります。そうなると、「債務者=長男」と「債権者=次男」というフラットでない関係が生まれます。

これだけで、健全な関係でなくなってしまうと感じられないでしょうか。さらに、代償金の支払いが滞ることがあれば、関係がさらに悪くなる可能性があります。

そう考えると、相続が発生する前に、不公平や共有がない「これなら兄弟姉妹でもめようがない」という状態に整えておくことが望ましいといえるのではないでしょうか。

具体的には「不動産を一部売却し、その売却代金を用いて相続人が公平に分けられるよう、資産を組み換える」という方法が考えられます。この方法を取ることで、資産を公平に分けやすくなり、家族間のトラブルを未然に防ぐことができます。

不動産売却を活用して「健全な状態」に近づけることで、「いい相続」を実現しやすくなるのです。

平田 明 エスクロー・エージェント・ジャパン信託 代表取締役

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ひらた あきら / Akira Hirata

大学卒業後、不動産開発会社を経て、2001年より不動産オークションの運営会社勤務。

2006年、地主が相続した事業用不動産(マンション分譲や戸建分譲、ホテル事業に適した広い土地、一棟収益など)の売却に特化したオークション事業を社内で立ち上げ、2年目に落札件数53件、落札総額72億円を実現。

2011年平田資産経営研究所株式会社設立、代表取締役に就任。東京、名古屋、大阪など、都市圏の相続不動産のオークションを多数手掛ける。2015年4月、相続不動産をより高値で、安全に、かつ円満に売却できる不動産オークションおよび不動産エスクローサービスを世の中に広げることを目指し、株式会社エスクロー・エージェント・ジャパンへ転籍。

2017年4月より現職。著書に『不動産を相場の3割増しで売る方法』(幻冬舎)

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