動脈硬化や糖尿病のリスクが上昇!30代から始まる「免疫の老化」とその防止に役立つ生活習慣

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体を守る免疫機能は30代ごろから老化が始まって加齢とともに徐々に進行します。そこには、個体の老化も深くかかわっています。

人間の体はおよそ60兆個(最近は37兆個と言われています)の細胞からできており、細胞の多くは分裂をしながら古い細胞と新しい細胞を入れ替えています。ところが細胞分裂の回数には限界があり、分裂しつくした細胞は二度と分裂・増殖できません。「細胞老化」と呼ばれる現象で、細胞老化に至った細胞は「老化細胞」と呼ばれます。

そして、老化細胞が増えると個体の老化も進み、蓄積した老化細胞はサイトカインを産生してがんや慢性炎症、臓器の機能不全など、多くの病気の原因となることがわかっています。マウスを用いた実験では、老化細胞を取り除くと動脈硬化や腎障害といった加齢に伴うさまざまな病気の発症が遅れました。

若い体では、老化細胞はがん細胞などと同様に、免疫により排除される仕組みになっています。これを免疫監視機能(異常細胞の除去)と呼びます。NK(ナチュラルキラー)細胞やキラーT細胞が老化細胞の表面に現れる老化抗原などを検知・破壊し、食細胞が処理するのです。

免疫システムが老化するとがんの発症リスクが高まる

ところが免疫システムが老化すると、がんの発症リスクが高まりますし、老化細胞も体内に蓄積しやすくなるのです。ワクチンの効果も若年層より弱まり感染症の重症化リスクも高まります。

加えて、免疫の老化は体内の炎症を増やし低レベルの炎症が持続する「炎症老化」の状態も招き、これにより動脈硬化や糖尿病などのリスクは上昇。アルツハイマー病、心血管疾患、骨粗鬆症との関連も指摘されています。

免疫が加齢により老化するのは、「胸腺」(胸骨の裏側に位置しT細胞を成熟させる器官)や「骨髄」といった、免疫細胞が作られる免疫工場の機能が低下するからです。結果、老化細胞の除去力は低下します。

特に胸腺は思春期以降に縮小し、60代以降では機能が大幅に低下します。これにより、新しく生まれるナイーブT細胞(まだ病原体に出会っていないまっさらなT細胞)が減少し、引き換えに病気との戦いの記録を持ち生き残った記憶T細胞(メモリーT細胞)が免疫の中心となります。しかし記憶T細胞もやがては細胞分裂が停止した「老化T細胞」もしくは機能が低下した「疲弊化T細胞」へと変化します。これらの細胞は免疫の活動を抑制するブレーキ因子が強く作用しており、老化を防ぐ免疫力は低下することになります。

胸腺は年齢とともに萎縮。ナイーブT細胞が減り老化T細胞が増える(画像:筆者提供)
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