動脈硬化や糖尿病のリスクが上昇!30代から始まる「免疫の老化」とその防止に役立つ生活習慣
胸腺だけではなく、骨髄も加齢に伴い免疫細胞の生産力が低下します。新しく生まれるB細胞(リンパ球の一種で抗体を作り出す)やNK細胞といったリンパ球は減り、その代わりにサイトカインを産生し炎症を起こすマクロファージが増え、掃除や修復にかかわるマクロファージは減少します。
これも加齢によって老化細胞の除去力が低下し炎症が慢性化する理由の1つです。慢性炎症は、臓器の老化を速め結果的に寿命を縮めることになります。
このように免疫系の老化は老化細胞の蓄積を促し、体の老化を加速させ、骨髄や胸腺の老化は免疫機能を低下させ、さらなる老化につながっていきます。個体の老化と免疫の老化はお互いに促進しあっているのです。
適切な栄養摂取のうえで行うカロリー制限に効果
そこで免疫老化を改善するために、疲弊化T細胞の機能回復や記憶T細胞の老化防止に関する研究も進められています。例えば、マウスを対象とした研究では、T細胞の遺伝子を操作したり、特殊な刺激を与えると機能を失わずに細胞を増やせることが証明されました。適切な方法が見つかれば人でも「若さ」を保ったT細胞を増やし続けられるかもしれません。
胸腺は強いストレスでも萎縮し、若いうちはストレスが排除されると再び大きくなりますが、加齢による萎縮を回復させるのは難しいとされています。わかっているのは、免疫の老化速度には個人差があり、遺伝的要因と生活習慣の両方が影響するということです。
例えば、100歳以上の家族がいるなど長寿家系は炎症反応が抑えられており、反対に関節リウマチといった自己免疫疾患や慢性炎症疾患の家族歴があると免疫系の消耗が早まる傾向が見られます。
老化を防ぐ研究で、人間に対して効果が報告されているのは、適切な栄養摂取のうえ行うカロリー制限です。カロリー制限は免疫系の老化も防止する可能性があります。2年間、カロリーを制限したら普通食の人に比べて胸腺が萎縮せず、ナイーブT細胞の数も多かったとの報告がありました。
ただし、カロリー制限は大きなストレスになる可能性もあり、どのような条件が最適なのか見つけるのは難しいとされています。
なお食事に関してはオリーブオイルや魚、ナッツといった地中海食、食物繊維、ポリフェノールを多く含むベリー類、DHAなどのオメガ脂肪酸、ヨーグルトをはじめとする発酵食品などは慢性炎症を抑制し、免疫系の老化を防止する効果が期待できます。これらは一般的に長生きや健康に資するとされているものです。
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