動脈硬化や糖尿病のリスクが上昇!30代から始まる「免疫の老化」とその防止に役立つ生活習慣

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もっと手っ取り早く、薬で免疫老化を防止できないでしょうか? 実際に2型糖尿病の治療役に用いられ、一部ではやせ薬として知られる今話題の「GLP1受容体作動薬」にもカロリー制限に加えて、炎症を抑え老化を抑制する効果があると期待されていますが、副作用もあり研究段階です。

また、若いT細胞を増やし、免疫老化を抑制する作用が認められている免疫抑制剤の「ラパマイシン」も検討されたことがあります。264人の高齢者を対象に低用量のラパマイシンを6週間投与したところ、投与後にインフルエンザワクチン接種により抗体生産量が増え、さらに1年間は感染症の発生率が有意に減少しました。

ただし長期的な病気の罹患率の低下、健康寿命の改善については不明ですし、何よりも免疫抑制剤は量の加減が難しく、すぐに一般人が使用できるとは考えにくいです。

追い込まない程度の運動習慣がおすすめ

適度な運動も効果的だとわかっています。運動により筋肉から分泌されるホルモン物質の「イリシン」には、認知機能の改善やアルツハイマー病、心疾患系の予防に効果があり、ストレス軽減や健康寿命の延伸が期待できます。強いストレスと免疫老化は密接にかかわっているので、自身を追い込まない程度の運動習慣はおすすめです。

近年は、骨に免疫機能を若く保つ役割があることも明らかになりました。全身の骨は強度を保つため、古い骨と新しい骨を入れ替える「骨代謝」を行っています。骨代謝は「骨細胞」(破骨細胞と骨芽細胞を管理)、「破骨細胞」(古い骨を溶かして壊す)、「骨芽細胞」(新しい骨を作る)の3種類の細胞によって行われます。

ドイツの研究チームは、骨芽細胞が分泌する「オステオポンチン」というホルモンが赤血球や白血球の前駆体である「造血幹細胞」の機能を維持することを発表しました。 造血幹細胞が若さを維持することで全身の免疫機能が活性化するというのです。さらに骨芽細胞が分泌する「オステオカルシン」というホルモンも、さまざまな抗老化作用があるとわかっています。

骨に負荷がかかると骨代謝は促されるので、かかとを上げてから下ろす「かかと落とし運動」は効果的と言われています。併せてカルシウムやたんぱく質、ミネラル、ビタミンもバランスよく摂ると骨の強度は強くなり、骨が強くなると免疫力が上がるばかりか、オステオカルシンには記憶力の向上、肥満の防止といった効果もあります。

働き盛りのビジネスパーソンは運動不足で、ラーメンや揚げ物などカロリーの高い食事も好みがちです。まずは、ここで紹介した生活習慣を取り入れてはいかがでしょうか。

(構成:大正谷 成晴)

吉村 昭彦 東京理科大学生命医科学研究所教授 慶應義塾大学医学部名誉教授

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よしむら あきひこ / Akihiko Yoshimura

1958年生まれ。1981年京都大学理学部卒業。1986年京都大学理学博士。大分医科大学生化学教室・助手、鹿児島大学医学部腫瘍研究施設・助手、助教授を経て1995年 久留米大学分子生命科学研究所・教授、2001年 九州大学生体防御医学研究所・教授 2008年 慶應義塾大学医学部・免疫微生物学教室教授。2024年4月より現職。1989-1991年アメリカ合衆国MITホワイトヘッド研究所に留学。2021年紫綬褒章、2022年国際サイトカイン学会ファイザー賞、2023年東レ科学技術賞などを受賞。『免疫「超」入門』など著書多数

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