「ジブリ作品」のネトフリ配信が《海外OK/日本NG》だったのはナゼ? Netflixが日本で『火垂るの墓』配信に踏み切る裏事情

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他のジブリ作品の展開状況はと言うと、日本の場合はやはり日本テレビに決定権があります。一方、海外に関しては割と複雑です。欧州拠点のグッドフェローズ(旧ワイルド・バンチ・インターナショナル)が、2002年に『千と千尋の神隠し』の配給権を獲得して以来、国際配給権を握っています。

日本と北米を除く全世界でジブリ21作品がすでにNetflixで展開されているのは、このグッドフェローズの働きによるものです。また、北米に関しては、北米の配信権を持つワーナー・ブラザース・ディスカバリー傘下のMaxで提供されています。海外ではジブリを配信サービスで観るのが当たり前になりつつあるのです。

他のジブリ作品の行方は・・・

映画『火垂るの墓』に続いて、他のジブリ作品が日本でも配信解禁となるかどうかは、結局のところ日本テレビ次第なわけですが、その判断基準の1つとして買い手の条件があります。金額設定や契約期間が基本となりつつ、短期と長期で作品の価値を上げることができるのかといったことも総合的に見るのが一般的です。

有力候補として考えられるのはNetflixです。それは現状の流れからみた単純な理由に限りません。著作権を持つコンテンツホルダーと買い手の関係性から言っても、Netflixは今、利害が一致する理想的な相手と言えるのです。というのも、Netflixはこの数年で購入番組を増やす戦略を取っています。Netflix人気番組の中で比較すると、2020年はNetflixオリジナルコンテンツが全体の60%を占めていましたが、2024年は購入作品が全体の60%を占め、いわゆる人気旧作の購入に積極的なのです。イギリスのアンペア・アナリシスの調査によりその傾向が明かされています。

またNetflix自身がアニメ作品のラインナップそのものを充実させています。Netflixによると、全世界7億人のNetflixメンバーのうち、50%以上がアニメを視聴し(2024年データ)、アニメの視聴時間が過去5年間で3倍近く増加しています。そのためNetflixはアニメを最重要カテゴリーに挙げています。さらに、Netflixの中でアジア系映画の人気も高まっています。Netflix公式「週間グローバルTOP 10(映画・非英語部門)」では、2024年はアジア系映画が8本ランクインし、他の地域に勝る成績でした。

このトレンドから見てもNetflixとジブリ作品の相性は良さそうです。あくまでも推測にすぎず、今後の行方は未知数ですが、「金曜ロードSHOW!」でもNetflixでも展開されるという選択があってもよい気がします。7月15日以降の映画『火垂るの墓』の反響が、今後のカギを握っていくのかもしれません。

長谷川 朋子 コラムニスト

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はせがわ ともこ / Tomoko Hasegawa

メディア/テレビ業界ジャーナリスト。国内外のドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、テレビビジネスの仕組みについて独自の視点で解説した執筆記事多数。最も得意とする分野は番組コンテンツの海外流通ビジネス。フランス・カンヌで開催される世界最大規模の映像コンテンツ見本市MIP現地取材を約10年にわたって重ね、日本人ジャーナリストとしてはこの分野におけるオーソリティとして活動。業界で権威ある「ATP賞テレビグランプリ」の「総務大臣賞」の審査員や、業界セミナー講師、札幌市による行政支援プロジェクトのファシリテーターなども務める。著書は「Netflix戦略と流儀」(中公新書ラクレ)。

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