「ジブリ作品」のネトフリ配信が《海外OK/日本NG》だったのはナゼ? Netflixが日本で『火垂るの墓』配信に踏み切る裏事情

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ジブリ作品初の国内配信解禁で新たな節目を迎えたと言えます。原作小説を刊行し、映画『火垂るの墓』の著作権を持つのは新潮社です。合意の背景には、配信という新たな手段に踏み切りたい同社と、購入作品を増やす傾向にあるNetflixの思惑があると思います。

新潮社コンテンツ事業室の矢代新一郎室長は「あの日から80年も経つのに、未だ戦火がやまない時代にあって、国籍、人種、民族問わず多くの方々の心にじわりと染み渡っていることを、嬉しく思います」と述べ、Netflix コンテンツ部門 バイス・プレジデントの坂本和隆氏は「この不朽の名作を日本の視聴者のみなさんにこそ、ぜひ観ていただきたいと考えていたので、今回の日本で初の配信が叶ったことを本当に嬉しく思っています」と公式コメントを発表しています。

なぜ新潮社はNetflixを選んだのか

『火垂るの墓』は2024年9月から日本以外の190以上の国や地域で配信が開始されると、初週にNetflix公式「週間グローバルTOP 10(映画・非英語部門)」の7位に入り、海外の作品ファンによる投稿はソーシャルでトレンドにもなりました。こうした実績が、日本での配信における期待値の高さにつながっています。

『火垂るの墓』の配信開始を発表したNetflix
『火垂るの墓』はNetflixで日本以外の190以上の国や地域で配信され、実績を残してきた(写真:今井康一)

そもそも新潮社が配信先としてNetflixを選んだ理由としては、他のジブリ作品が2020年からNetflixで世界配信されていることが大きそうです。映画『火垂るの墓』の場合はコンテンツホルダーである新潮社があくまでも展開の決定権を持ち、必ずしもNetflixで配信する必要はなかったのかもしれません。ですが、視聴者にとっては同じジブリ作品を同じプラットフォーム内で視聴できるほうが便利です。作品にとっても、ジブリというブランドの中で視聴の機会を増やすメリットがありそうです。

海外が先行していたのは、海外と国内ではこれまでの作品の展開状況に違いがあったからだと推測できます。海外は放映・配信権を持っていた既存の買い手であるビジネスパートナーを早めに整理でき、Netflixに集約しやすかったのかもしれません。一方で日本の場合は、スタジオジブリの親会社であり国内放映権を持つ日本テレビとの長きにわたる契約条件を鑑みる必要性はあったはず。そのためタイミングがズレた可能性があります。

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