決意からわずか3カ月で終えた実家じまいだが、その過程は決してスムーズなものではなかった。
「大学生になった子どもたちの学費のために土日も働いていましたし、コロナ禍の時期でもあったので実家にはほとんど帰れていませんでした。両親とは電話でやり取りはしていましたが、ちょっと落ち着いた頃に実家へ帰ると母がだいぶ弱っていたんです。家も散らかり出しているし、言動もおかしいし、慌てて医療機関へつないだんです」
しかし、ここで問題が起きた。母に病識(病気であるという自覚)がなかったのだ。
「母は病院で処方された薬を飲んでくれず、父は困り果てていました。薬は飲まない、食事もとれない、夜は眠れない……、これでは命の危険まであるということで緊急入院することになったんです。病院の先生が提示したのは、実家の近くの病院で入院するか東京の病院に入院するかの2択でした。先生の意見にも後押しされる形で、家族5人で車に乗って東京の病院へ向かいました」


1人暮らしの高齢者が認知症になると、家はどうなるのか
「母は階段から転落していたこともあったので、2階にはほとんど上がらないようになっていました」
長女がそう言うように、実家の階段には滑り止めのマットが貼り付けられている。その階段を上がった2階は使っていた形跡がなく、モノの量も1階に比べると少ない。そんな理由から、歳をとった後は階段のないマンションへ引っ越す高齢者も少なくない。

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