阿部寛、中井貴一、内野聖陽。今期"連ドラ"の主役にベテラン俳優が多い理由。若者のテレビ離れが指摘されているが…

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『侍タイムスリッパー』が日本アカデミー賞最優秀作品賞を獲得したように、昨年は日本でも時代劇に注目が集まった。しかし一方で、時代劇の制作本数は減ってきている。

そのなかで、先ほども書いたように阿部寛、中井貴一、内野聖陽は時代劇でも実績をあげてきた。真田と同様、時代劇の現場をよく知るぎりぎりの世代と言えるだろう。

同時に、3人には時代の変化に適応する柔軟性もある。阿部寛の『結婚できない男』や内野聖陽の『きのう何食べた?』などは好例だ。

つまり3人には、伝統的なドラマと革新的なドラマの両方で力を発揮できるという他の世代の俳優にはない強みがある。その点が、転換期に入ったテレビで重宝される理由なのではなかろうか。

『続・続・最後から二番目の恋』が「月9」になった意味

中井貴一の『続・続・最後から二番目の恋』が「月9」なのも、その意味で興味深い。若い視聴者がターゲットで旬の若手俳優が主演するイメージが強いこの枠に、60代の俳優が主演するのはあまり記憶にない。

「月9」では、これまでスターシステムに基づいた作品が多かった。ストーリーや役柄よりも先に主演俳優が決まっているキャスティングありきのドラマづくりである。

それ自体はひとつの方法であり、否定されるべきものではない。それで上手くいった時代もあるだろう。しかし、先ほど述べたように、テレビはいま転換期のなかにある。

若者のテレビ離れが指摘されて久しい。ただ、だからと言って、年齢の高い層だけに向けた番組づくりをしてしまうわけにもいかない。テレビはすべての世代に見てもらうことを目指すものだからだ。その点、中井貴一のように若手俳優と絡んでも違和感のないタイプのベテラン俳優は、現在のテレビのニーズにぴったりなのだろう。

『続・続・最後から二番目の恋』第1話で、中井貴一が小泉今日子に対し、「我々お互いに、新しいんだか古いんだか」と居酒屋でしみじみと語る場面がある。「アラ還」になってもまるで若者のように迷っている。だが裏を返せば、それは伝統を守る立場にも革新的なことに挑戦する立場にも、どちらにもなれるということだ。

ベテラン俳優が主演する今期の3作。意外にこれからのテレビドラマの未来を左右するものになるのかもしれない。

太田 省一 社会学者、文筆家

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おおた しょういち / Shoichi Ota

東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビと戦後日本社会の関係が研究および著述のメインテーマ。現在は社会学およびメディア論の視点からテレビ番組の歴史、お笑い、アイドル、音楽番組、ドラマなどについて執筆活動を続ける。

著書に『刑事ドラマ名作講義』(星海社新書)、『「笑っていいとも!」とその時代』(集英社新書)、『攻めてるテレ東、愛されるテレ東』(東京大学出版会)、『水谷豊論』『平成テレビジョン・スタディーズ』(いずれも青土社)、『テレビ社会ニッポン』(せりか書房)、『中居正広という生き方』『木村拓哉という生き方』(いずれも青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』(筑摩書房)など。

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