阿部寛、中井貴一、内野聖陽。今期"連ドラ"の主役にベテラン俳優が多い理由。若者のテレビ離れが指摘されているが…
ただ俳優人生は順風満帆だったわけではない。189㎝の高身長が理由で役柄が限られてしまったり、ファッションモデルのイメージがマイナスに働いた部分があったりと、苦労した時期もあった。
壁を打ち破るきっかけになったのが、『TRICK』(テレビ朝日系、2000年放送開始)だろう。
仲間由紀恵とのW主演。阿部が演じたのは物理学者で大学教授の上田次郎。仲間演じる売れないマジシャン・山田奈緒子とバディを組み、超常現象が絡んだと思しき事件を解決する。と言ってもシリアス一辺倒ではなく、上田と山田の軽妙な掛け合い、ギャグや小ネタが満載のコメディ的な面白さで人気を博した。
そこでは高身長で二枚目というマイナスにも働いていた点が、逆にギャップとなってコミカルな味を引き立てた。それまでなら絶対やらなかったような役柄がハマったのである。
阿部寛のユーモラスな味は、『結婚できない男』(関西テレビ。フジテレビ系、2006年放送開始)でさらに開花する。独身の建築家・桑野信介は、仕事はできるが趣味にも生活にもこだわりが強すぎて変人扱いされている。だがどこか憎めず、意外に優しいところもある。
そんな桑野が夏川結衣演じる女性医師・早坂夏美と出会い、互いに惹かれ合うなかで次々に起こる騒動がコミカルに描かれる。続編もつくられるほどの人気作になり、これで阿部寛のファン層もぐっと広がったはずだ。
中井貴一は屈指の万能型俳優
戦後の映画の大スター・佐田啓二を父に持つ中井貴一は、1961年生まれ。
20歳のとき映画『連合艦隊』でデビュー。1982年『立花登 青春手控え』(NHK)では、ドラマデビュー作にして初主演。そして翌1983年には、いまも名作として語り継がれる『ふぞろいの林檎たち』(TBSテレビ系)の主演を務める。
サザンオールスターズ「いとしのエリー」が主題歌の同作は青春群像劇。ただ、ありがちな明るい青春ものではない。中井が演じる仲手川良雄は四流大学の4年生。就職活動も恋愛も上手くいかない。脚本の山田太一は、そんな若者たちの屈折した心情を巧みに描いて共感を呼んだ。
『続・続・最後から2番目の恋』は、人気シリーズの3作目。中井が演じる長倉和平、もうひとりの主演である小泉今日子が演じる吉野千明はともに「アラ還」世代である。だが人生を達観するにはほど遠く、いまだ迷ってばかりだ。

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