コメ高騰で利益は出しやすくなったが…農家はそれでも楽観できない苦しい事情

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また、ちょうどコメの端境期で卸業者や流通業者の在庫にもあまり余裕がなかったことから、品薄は一層深刻になりました。この状況が報道によって取り上げられることで「コメ不足」という印象が全国に広がり、消費者の不安感をあおる形となり、さらなる買いだめ行動を引き起こしました。

加えて、日本国内はインフレ傾向にあるにもかかわらず、コメだけはここ最近まで価格が比較的安定しており、購入しやすい状況が続いていたため、逆に消費が増えていた可能性もあります。そこに、インバウンドの回復による観光地での消費増、海外への米輸出量の増加も重なり、需要全体が底上げされていたと考えられます。

このように、一見するとそれぞれは小さな変化のように見える事象が、タイミングを同じくして連鎖的に発生した結果、「一気に供給が足りなくなった」という印象と実際の品薄が重なり、異例ともいえる米価の高騰を招いたのです。

とりわけ重要な要因としては、「中長期的に続いていた需給のゆるやかな不均衡」と、「地震をきっかけとした備蓄行動とその報道による影響」の2つが挙げられますが、その他の要素もすべて複合的に絡み合い、今回の事態をここまで大きくしたと見ることができるでしょう。

農家から見ると「チャンスではなくリスクが大きい」

価格が上がったことについて、筆者の支援先の農家の方々からは「ようやく利益が出しやすくなった」という声が聞かれます。しかし、実際には「これはチャンスではなく一時的な現象。むしろ数年後には大きく価格が下がる可能性があり、リスクのほうが大きい」と、冷静に状況を見ている方が多いです。

高騰を受けて大きな変革に踏み出す農家は少数で、飼料用米から主食用米へと切り替える動きは一部で見られるものの、多くの農家はこれまでの取引先を大切にし、長期的な視野で経営を行っているのが現状です。

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