スマホ決済、生体認証など「多様化する決済手段」が招く重大懸念 国家による情報管理や情報漏洩リスクにどう備えるべきか

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したがって、西側諸国においては、「中央銀行デジタル通貨」は発行できる可能性がほとんどない。にもかかわらず、その構想に対しての情報収集は継続し、「いつでも発行する準備はできている」と発言することになっている。情報や技術の面で遅れている国と見られることは望ましくないからである。

しかし、この中央銀行デジタル通貨を発行している国がある。一部の島嶼国家と中国である。島嶼国家は小さい島国なので、おカネ(紙幣・硬貨)を運搬することが非常に困難であり、そのため利便性の高い中央銀行デジタル通貨を使用している。

「現金」の流れも国家が捕捉可能に

中国の場合は「銀行」をはじめとした金融機関の預金口座はもちろん、「アリペイ」や「ウィチャットペイ」といった「QRコード決済サービス」も国家に情報が流れているといわれている。

国民の金融活動のうち「現金」のみがフォローできていなかったが、「中央銀行デジタル通貨」を発行することで、個人の金融活動における情報をすべて当局が“管理”できることになった。

決済に関する技術は、加速度的に進化している。うまく使えば、利便性は大いに高まるだろう。一方で、それは過度な情報の集約を招くことになり、国家による個人情報の管理やハッキングによる情報漏洩のリスクが拡大することになる。これらの問題をどうバランスさせていくかが、今後の課題となっていくだろう。

宿輪 純一 帝京大学経済学部教授・博士(経済学)/社会貢献公開講義「宿輪ゼミ」代表

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しゅくわ じゅんいち / Junichi Shukuwa

帝京大学経済学部教授・博士(経済学)。1963年生まれ。麻布高校・慶應義塾大学経済学部卒。富士銀行、三和銀行、三菱東京UFJ銀行を経て、2015年より現職。2003年から兼務で東大大学院、早大、慶大等で非常勤講師。財務省・金融庁・経産省・外務省、全銀協等の委員会参加。主な著書に『通貨経済学入門(第2版)』『アジア金融システムの経済学』(日本経済新聞出版社)、『決済インフラ入門〔2020年版〕』(東洋経済新報社)、『円安vs.円高(新版)』『決済システムのすべて(第3版)』『証券決済システムのすべて(第2版)』『金融が支える日本経済』(共著:東洋経済新報社)、『決済インフラ大全〔2030年版〕』(東洋経済新報社)などがある。

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