「世界一物価が高い国」スイスの鉄道旅行攻略法  「トラベルパス」で2週間以上滞在がベストだが…

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IT化も進んでいる。改札がないため、列車に乗ると必ず検札があるが、周囲に紙の切符を見せる人はおらず、ほぼ全員がスマホのアプリにある切符(QRコード)を車掌に見せる。「スイストラベルパス」は紙に印刷でもかまわないが、いずれにしても車掌が求めるのはQRコードである。

スイス国鉄のポータルサイトの時刻表も優れもので、私鉄の時刻もすべて掲載されているほか、全駅で発着するプラットホームも表示され、駅での鉄道撮影に重宝した。遅延情報は即座に時刻表に反映するので、遅延を加味した到着時刻や、どこでダイヤ通りに回復するかなどの情報も即座に反映される。日本よりずっと進んでいて、利用者本位に感じた。

隣国から乗り入れの高速列車も乗り放題

鉄道ファン的にうれしいこともある。隣国のフランスからはTGV、ドイツからはICE、オーストリアからはレールジェット、イタリアからも国際列車が乗り入れているが、これら、いわば特別な列車もスイス国内では、全席指定ではないので、「スイストラベルパス」で自由に乗車できる。たとえばTGVは、フランスでは、フランス国鉄乗り放題の「ユーレイルパス」フランス版を持っていても指定席券が必要となるので、スイス国内のほうが気軽に利用できる。

夜行列車も多く残っていて、夕方から夜にかけてのチューリッヒ中央駅は独特の雰囲気に包まれる。ドイツ、オランダ、オーストリア、チェコ、ハンガリー、スロベニア、クロアチア行きがあり、ドイツへはハンブルク行きやベルリン行きがあるいっぽう、スロベニア行きやクロアチア行きはオーストリアのグラーツ行きに連結し、途中で車両の連結・切り離しを繰り返しながら終着のザグレブ(クロアチア)を目指す。

スイスでも客車は減少傾向で、電車が主流になった。客車列車も、客車の最後部にも運転台があり、機関車が引いたり押したりするタイプである。常に機関車が先頭になるのはこれら夜行列車のみとなり、夜行列車の出発時は現地の鉄道ファンもその姿をカメラに収めていた。

こんなスイスの鉄道旅であるが、気になることがあった。筆者は2024年8月末から9月にかけての旅であったが、連日暑い日が続き「スイスはこんなに暑かったかな?」と感じた。おそらく地球温暖化の影響と思うが、するとヨーロッパの鉄道車両は日本のような強力な冷房装置ではないので、車内が暑く感じた。日本の弱冷房車より効きが悪い感じである。とくに2階建て車両は側面窓が屋根に回り込んでいる場合が多く、太陽光が車内に差し込む。他のヨーロッパでも冷房の効きの悪さを感じたことがあるので、気候の変化に応じてヨーロッパの車両も冷房能力強化が必要だと思った。

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谷川 一巳 交通ライター

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たにがわ ひとみ / Hitomi Tanigawa

1958年横浜市生まれ。日本大学卒業。旅行会社勤務を経てフリーライターに。雑誌、書籍で世界の公共交通機関や旅行に関して執筆する。国鉄時代に日本の私鉄を含む鉄道すべてに乗車。また、利用した海外の鉄道は40カ国以上の路線に及ぶ。おもな著書に『割引切符でめぐるローカル線の旅』『鉄道で楽しむアジアの旅』『ニッポン 鉄道の旅68選』(以上、平凡社新書)などがある。

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