ではリアル店舗とネットスーパーのすみ分けは、はたしてどうなるのだろうか。
ネットスーパーが溶かすリアルとネット
そもそもの問いの立て方が間違っているのかもしれない。オムニチャネル化は、すべての販売チャネルをシームレスにつなげるものだとしたら、リアル店舗とネットの区別は融合していかざるをえない。
西友の取り組みはそれを象徴している。リアル店舗における商品陳列と、ネット配送の商品在庫の違いは、西友においておぼろげだ。たとえば日本経済新聞が8月22日に報じたところによれば、西友が2016年5月にオープンする新店舗では、1階は通常のスーパーマーケットであり、2階はネットスーパー専用の倉庫となる。
店舗とは、そもそも消費者の近くにある存在だ。当然ながら、交通量や立地などを考え、消費者が行きやすい場所を目指す。しかし、考えるに、消費者が”行きやすい”とはオムニチャネル時代にあっては、一方的な考えにすぎない。商品を配送する観点から考えると、店舗は販売場所であり、同時に持っていく=物流拠点の意味を持たねばならない。
小売業における「浅い、深いイノベーション」
売り場面積を広げ取扱商品を増やすだけの施策は、俗に「浅いイノベーション」といわれる。それに対し、プライベートブランド商品を拡充したり、消費者データを分析したり、配送サービスを利便化したり、オムニチャネル化により絶え間ぬ付加価値を提供したりすることを「深いイノベーション」と呼ぶ。
前者の「浅いイノベーション」と言わざるをえないGMS(総合スーパーマーケット)では不振が続く。あのイトーヨーカドーでさえ先日、2020年までに40店舗の廃店を決断した。ユニーグループ・ホールディングスもここ数年で最大50店舗を廃店する可能性が高い。
ただ同じイトーヨーカドーであっても、先鋭的な取り組みを続けていたネットスーパー事業は売上高500億円と順調に推移している。これはセブングループ各社とのシナジーによって、さらに拡大していくだろう。
2017年には、消費税が増税されると言われている。スーパーマーケット各社は安穏とはしていられない。ネットスーパーの勃興が示しているのは、単なる各社のネット事業の誕生ではなく、リアル企業もネット企業も関係なく、生き残りを争う流通戦争の幕開けなのだ。
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