金融クライシス 新グローバル経済と日本の選択 田中直毅著 ~新たな「秩序」を訪ね歩き「今」を解析する

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「グローバルな、あるいは地域的な統合」の難しさを露呈した欧州。「EUという単位で『産業再生機構』」を設立することが可能なのか。あるいは「押し入れ」に「散らかしもの」が押し込まれたままの米国の金融市場。しかし米国の銀行のあり方を考える際には「経済的」な問題とは別に、あえていえば社会的考察が不可欠なようである。

「新旧の勢力が入り混じりながら」も「政策目標の実効性と有効性という概念」がやっと定着してきた新興国としてのロシア。「革命は何を克服し、何を課題としてなおも残しているのかが、内外から問われる」中国。その中国が、悪化する雇用情勢と、「反腐敗」と「民族主義」という軸を背景に「外側社会との調和にどれだけ重点をおくのか」は、東アジア全体に関わることであり、日本の立ち位置からも見逃せない。

20世紀の残滓を点検しつつ、新たな「秩序」を訪ね歩く著者の「知の格闘術」というべき営為を通して、私たちの立っている「今」を知ることができる。

たなか・なおき
経済評論家、国際公共政策研究センター理事長。1945年生まれ。東京大学法学部卒業。東大大学院経済学研究科修士課程修了。国民経済研究協会主任研究員を経て、84年より本格的に評論活動を始める。21世紀政策研究所理事長を経て2007年より現職。

新潮社 1680円 313ページ

  

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