東京電力の抵抗で進まない原発事故賠償 「兵糧攻め」に苦しむ被災者たち

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原発ADRには、業務開始からおよそ5カ月で800件超の申し立てがなされたが、現在までに和解に至った案件は4件にとどまる。東電の後ろ向きの姿勢に加え、本人の直接申し立てが多数で、弁護士のサポートが届いていないことも一因だ。

弁護士も手をこまぬいているわけではない。たとえば、東京の三つの弁護士会で構成する原発被災者弁護団は、都内各地で毎週のように相談会を実施している(写真)。ただ、「被災者がなかなか集まらない。弁護士費用は格安の設定だが、慣れておらず気後れするためか受任につながらない」(若手弁護士)。そのため、申し立て後に当事者から仲介委員の弁護士が一から話を聞く状態で、手続きが滞りがちだ。

成果が上がらず存在意義が問われ始めた原発ADRだが、昨年末に出した一つの和解案が注目を集めている。ADRは、東電に対し、従来認めていなかった不動産の賠償や、中間指針より踏み込んだ慰謝料および追加請求を行える“内払い和解”を認めるべきとの考えを初めて示した。

ところが、これに対して東電は、不動産の賠償こそ認めたものの、その他の条項はすべて拒否。和解案には拘束力はなく、争うには費用と時間のかかる訴訟提起しか道は残されていない。

「今は貯金を食い潰して生活しているが、年老いた親を抱え新しい仕事も見つからず、結局彼らの言い値で妥協するしかないのか」。都内の相談会を訪れた男性は肩を落とす。

東電の“兵糧攻め”を座視し、被災者を泣き寝入りさせるようでは、賠償スキームそのもののありようも厳しく問われることになる。

※注 2月27日、東京電力が原発ADRの示した和解案を受け入れたことが明らかとなった。詳細は/articles/-/8713

(風間直樹 =週刊東洋経済2012年2月18日号)

記事は原則として週刊東洋経済執筆時の情報に基づいております。

 

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