裁判外紛争解決手続きで東電と大熊町住民が和解、東電が2300万円支払い
福島第一原子力発電所事故で避難生活を強いられている福島県大熊町の住民が原子力損害賠償紛争解決センターに申し立てていた裁判外紛争解決手続き(ADR)で、住民と東京電力との間で和解が成立したことが2月27日、明らかになった。
住民を支援してきた「原発被災者弁護団」の小海範亮弁護士は、「弁護士が関与した形での和解成立はおそらく初めて。和解金額は申し立て時の請求金額の2分の1程度にとどまるなど小さな一歩に過ぎない」としつつも、「まずは一部でも取り戻すことが生活再建への第一歩につながる」と、和解の意義について述べた。
ADRを申し立てていたのは原発事故前まで大熊町で生活していた佐藤龍三さん(72)および妻の二人。住宅や家財道具、精神的損害などへの賠償および避難や一時立ち入りに際しての交通費などとして2312万円の和解金額を支払うことで東電と合意した。
もっとも、ADRでは課題も表面化している。まず第一に、ADRは迅速な解決を目的としているにもかかわらず長い時間がかかっていることだ。今回の申し立ては昨年9月1日の申し立てから和解合意までに半年近くを要している。東電が和解金からすでに支払った仮払金を差し引くことを主張したことが協議が難航した原因だ。
また、和解契約書では、家屋や家財道具、自動車などの損失については「今後の賠償請求を妨げないものとする」とされているが、この一文を入れることについても「東電がかなり抵抗した」(小海弁護士)という。
とはいえ、ADRを通じて原発事故で被害を受けた住民が生活再建への手がかりをつかんだ意義は大きい。記者会見に同席した海渡雄一・日本弁護士連合会事務総長(弁護士)は、「今後、原子力損害賠償紛争解決センターがこうした形で和解案を出す可能性は高い。弁護士を立てて戦えば、相応の賠償額を獲得できるということが周知されることが望ましい」と語る。
2月29日には双葉町の30~50世帯が新たに集団でADR手続きを申し立てることが計画されているという。
■写真:和解成立について説明する小海範亮弁護士(右)と海渡雄一・日弁連事務総長
(岡田広行=東洋経済オンライン)
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