「そんなのうまくいくわけない」が口癖 部下を否定せずにはいられない上司の心の闇
「これまでのやり方で、うまくいっていたし、業績もよかったのに、なぜ変えるんだ」という不満があちこちで出ている。また、「こんな小さな会社でMBAのやり方でやって、うまくいくわけがない」「親会社で失敗したから、うちに飛ばされたくせに」などと、この上司の陰口をたたく社員も少なくない。
だが、面と向かって「今のやり方では、あまりうまくいかないんじゃないですか」と言えるような社員はいない。少しでも批判めいたことを口にすれば、即座に否定され、怒鳴られるのが目に見えているからである。
さらに厄介なのは、部下の提案を即座に却下するくせに、数日後には「これでいくしかないだろ」と言って、部下が出していた案をあたかも自分が考え出したかのように提案することだ。本当に忘れているのか、それとも意図的にやっているのか、さだかではないが、こんなことが続いたら、誰だってやる気をなくすに違いない。
自覚がないことが最大の問題
上司が部下の意見を必ず否定するのは、部下の提案をそのまま受け入れたら、部下のほうが優秀だと認めることになるのではないか、部下から見くびられるのではないかという不安が強いからだろう。こうした不安に二つの要因が拍車をかけているように見える。一つは上司がこの会社では新参者ということ、もう一つは業績が低下していることである。
この上司は、出向先の子会社で果たして自分が認められるのかという不安にさいなまれているからこそ、これまでのやり方をすべて否定せずにはいられないと考えられる。さらに、業績低下のせいで、子会社だけでなく親会社からも認めてもらえなければ、親会社に切り捨てられ、出向が片道切符になって、親会社に戻れなくなるのではないかという不安も抱いているのではないか。
不安が強いほど、それを払拭せずにはいられないので、「自分はこんなにすごいんだ」と優位性を誇示できるような何かが必要になる。この上司の場合、それが親会社とMBAというわけで、これら二つの「防具」を持ち出して、会社のこれまでのやり方も部下の提案もすべて否定する。もしかしたら、否定することによって、自分の存在感と影響力を示せると思い込んでいるのかもしれない。
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