「そんなのうまくいくわけない」が口癖 部下を否定せずにはいられない上司の心の闇
もっとも、自分では良案を考えつくことができない。だから部下の提案をさも自分の発案であるかのように持ち出し、自分の手柄にしてしまう。その結果、部下の反感を買い、やる気を失わせ、さらなる業績の低下を招いているが、こうした悪循環に陥っていることに気づいていないように見える。上司に自覚がないことが最大の問題ともいえる。
否定マウントの本質
この上司は、自分が導入したMBA仕込みのやり方でうまくいくと信じ込んでおり、現実に目を向けようとしない。いや、むしろ、現実から目をそむけ続けていたいからこそ、MBA信仰にすがるのかもしれない。
このような心理を精神医学では「幻想的願望充足」と呼ぶ。うまくいってほしいという願望と、実際にうまくいっているという現実とは別物のはずなのに、混同している。だから、現実を直視できず、どうしても自分の願望が現実に満たされたかのような幻想を抱きやすい。
当然うまくいかないが、自分の思い通りにならない現実を突きつけられると、プライドが傷つき、耐えられない。そこで、自身の優位性を誇示するための「防具」である親会社とMBAをさらに持ち出す。
「防具」を誇示することによって尊敬や称賛を得られれば、プライドは守られるかもしれない。だが、そうは問屋が卸さない。むしろ、周囲の敵意をかき立てたり反感を買ったりすることが多く、面従腹背になりやすい。当然、業績が上向きになるわけがない。
そういう事態に直面しても、「自分の能力や経歴をねたんでいるだけだ」と被害的に解釈しがちで、親会社とMBAに固執したまま、やり方を変えようとはしない。「ポジティブシンキング」といえば聞こえはいいが、要するに現実から目をそむけて自分のプライドを保とうとしているにすぎない。こういうタイプは、次のように思い込んでいることさえある。
「私は他の誰よりも優れている。だから、誰もがそれを認めて、私に一目置くべき。なのに、そうせず、批判したり異議を唱えたりするのは、バカか、悪意の塊か、どちらか。もしかしたら、両方かもしれない」
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