東武SL大樹、プロしか知らない「毎日運行」の裏側 転車台でファン獲得、24時間「火」は消さない
それはさておき、午前の運行を終えて機関庫に戻って来たSLは、午後の運行に備えてひと休み。といっても、その間にも整備や準備の作業を続けている。その1つが「缶替え(かまがえ)」だ。車体下(つまりレールの間)に設けられたスペースに、火室の中の余分な灰をかき出してゆく。機関車が去った後にのぞいてみれば、燃え尽きた石炭の灰が層になっていた。
車両の前方ではシューシューと激しい音を立てながら白い蒸気を地表に向かって吐き出している。まるでいまにも出発しそうな勢いだが、これはドレン切りという作業。シリンダーの中に残っていた蒸気が冷えて水になって溜まったものを排出する作業だ。

機関庫内でどんな作業をしている?
「また、このときに水や石炭の補給もしています。石炭は3トン積みで、1往復で0.5トンしか使わないので、毎回補給するわけではないですが、水は半分ほど使ってしまうので補給しています」(大谷車両課長)
もちろんこうした作業の間も火室から火を絶やすことはない。それどころか、1日の運行を終えても、またその日1日出番がない機関車でも、常に石炭は燃え続けている。24時間、蒸気機関車から火が消えることはないのだ。これを「保火」という。
「長期間運転しないようなケースを除き、火を消すことはありません。火を保っておくことで、運転前に早く圧力を上げることができるんです。もし消してしまったら、それだけ出発に時間を要することになる。とくに冬場などは鉄でできているSLのこと、冷え切ってしまって全体が温まるまでにかなり時間がかかってしまいます」(大谷車両科長)
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