東武SL大樹、プロしか知らない「毎日運行」の裏側 転車台でファン獲得、24時間「火」は消さない

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その後、推進運転で踏切の上り方まで引き上げ、その後進路を反転してホームへ。ホーム入線後は、普通の列車と同じようにお客を乗せ、定時になったら高らかに汽笛をあげて出発する。

ただ、普通の列車とは違うのは見守る人の誰もが手を振っているということだ。ホームに立つ駅員や機関区の職員はもちろん、広場から出発を眺めていた観光客、また地元の親子連れ。みな手を振って「SL大樹」を見送っている。この心温まるシーンが、いわばSL運行による最大の効果にして、真髄といっていい。

再び転車台を経て、客車の鬼怒川温泉方先頭へ連結する(撮影:鼠入昌史)
【写真をすべて見る】午前に鬼怒川温泉駅まで往復して下今市駅に戻ってきたSLが午後に再び出発するまで。進行方向を変えるだけでも相当複雑な動きをしていることがわかる。その間にいったん機関庫に入って準備をするなど想像以上に忙しい

一方、今後の課題がないわけではない。下今市―東武日光間の「SL大樹ふたら」が加わったにせよ、基本は下今市―鬼怒川温泉間の運行。それも週1回などではなく毎日の運行だ。だから、撮り鉄が集中しないというメリットはあるものの、うがった言い方をすれば“特別感”が薄れてしまう。

「最近は日光への外国人観光客も増えてきていますが、SLにはまだそれほど、なんです。日本人観光客に『これって毎日走ってるの?』などと聞かれることも」(大谷車両科長)

まだまだ「伸びしろ」がありそう

東武の沿線の駅ではポスターなどでお知らせしているので、うまく周知をしていけば、伸びしろはありそうだ。

SLの運行を始めるにあたって、東武鉄道では迷惑をかけることになると沿線の住民宅を訪ねて説明を繰り返して理解を得るなど、地道な活動によって“地域の資産”としての価値を獲得してきた歴史がある。

もし、わずかでも時代が違えば、コロナ禍もあったことだし、なかなかSLの運行が実現しなかったかもしれない。そうした中で手にした地域の資産・SL大樹。息の長い活躍を願いたいものである。

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鼠入 昌史 ライター

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そいり まさし / Masashi Soiri

週刊誌・月刊誌などを中心に野球、歴史、鉄道などのジャンルで活躍中。共著に『特急・急行 トレインマーク図鑑』(双葉社)。

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