対話型からエージェントへ 「生成AI」群雄割拠の最前線。オープンAI、GAFAM、中国勢……

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推論型モデルの特徴は、タスクを達成するための計画をAI自身が立てて実行に移すことである。この特徴を生かし、オープンAIやグーグルは、Deep Researchと呼ぶ、段階的な作業計画に基づいたリサーチ・分析支援AIの提供を始めている。

このモデル競争や生成AI普及を支援しているのがクラウドベンダーだ。マイクロソフトはオープンAIとの連携を深め、Azureを軸に(開発者のコーディングを支援する)GitHub Copilotやオフィス製品へのAI統合を進めている。グーグルはアンドロイド端末やクラウド上でのマルチモーダル生成AIの活用に注力し、アマゾンはアンソロピックのほか、複数企業のモデルを運用できる環境をAWS上に構築することで、クラウド市場をリードしている。

中国台頭とインフラ課題

24年後半からは、中国企業の台頭にも目を見張る。とくに注目されたのがディープシークの「DeepSeek-R1」と「DeepSeek-V3」だ。

これらのモデルは性能面で米国の先行企業に匹敵、あるいは凌駕するとされ、中でもDeepSeek-R1は低コストでのモデル構築を可能にし、新興プレーヤーでもAI開発に参入できる環境を切り開いた。高価格なGPU(画像処理装置)を大量投入しなければ高性能モデルはつくれない、という常識すら覆されつつある。

アリババが25年1月に発表した「Qwen2.5-MAX」もその性能で業界にインパクトを与えた。中国勢はメタと同様にモデルのオープン化を進め、グローバル市場での広がりを視野に入れる。

このように、生成AIの商用利用は世界規模で加速しているが、一方で課題も残る。それは、サービス普及に見合うGPUやサーバーインフラの不足だ。生成AIを動かすためには膨大な演算資源が必要であり、とくにAIを活用したサービスが増加する25年以降は、モデル構築以上に、運用インフラの整備・拡大が市場成長のボトルネックになるとみられている。

世界各国でAIに関する規制やプライバシー保護の取り組みが進んでおり、技術と社会制度とのバランスをどう取るかも今後の大きな論点だ。これに呼応する形で、プライバシー重視型AIや(モバイルデバイス上で直接処理する)オンデバイスAIといった技術への投資も活発化している。ユーザーデータを直接収集せず、AIが生成した合成データにより自己学習する技術開発も進んでいる。

生成AIは、もはや単なる技術革新ではない。それは産業構造、働き方、経済戦略、そして国家間競争までをも巻き込むグローバルなゲームチェンジャーである。その行方を見極めることが、次世代の成長をつかむカギとなるだろう。

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橋本 泰一 RevComm取締役リサーチディレクター/順天堂大学健康データサイエンス学部非常勤講師

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はしもと・たいいち

東京工業大学大学院博士(工学)。東京工業大学助手および特任助教授として自然言語処理の研究に従事。グリー、LINEを経て、2021年4月からRevCommに参画。

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