時給480円→海外セレブ担当!「日本人ネイリスト」の波瀾万丈な人生 母を亡くし20代で単身スペインへ 異国で這い上がった彼女の生き方

2022年12月5日、スペイン・バルセロナ。マドンナやレディー・ガガなどがコンサートをしたことでも知られる「パラウ・サン・ジョルディ」のステージ上に、韓国のガールズグループBLACKPINKの姿があった。約1万8000人の歓声が響く中、ステージの袖でパフォーマンスを見守る、一人の日本人女性がいた。
数々の著名人のネイルを手掛けるネイリスト、宮坂沙弥香さん(43歳)だ。バルセロナでネイルサロンの「KIRA NAILS(キラネイルズ)」を営んでいる。
「人をキラキラ輝かせたい」
彼女が抱く信念は至ってシンプルだが、その道のりは平坦ではなかった。
21歳の頃、母を亡くした。人生に迷い、辿り着いた先がスペインだった。ゼロからスペイン語を学び、仕事を得るも、初任給は500ユーロ(約8万円)。ビザ問題、ネイリストの社会的地位の低さ、外国人としてナメられる日々ーーそれが彼女の出発点だ。
「自分の価値は自分で上げる」
19年が経った今、彼女が手掛ける仕事は、エルメス、アルマーニ、ルイ・ヴィトン、ディオールなど名だたる一流メゾンが連なる。そしてシャキーラの専属ネイリストを8年間務め、グウィネス・パルトロー、ペネロペ・クルスといった大物セレブ、若者からの人気を集めるBLACKPINKからもオファーを受ける存在となった。
不利な環境から、どのように沙弥香さんは世界が認めるネイリストとしての地位を築き上げたのか。その軌跡を追う。

美容部員だった母に憧れて
「余命1カ月です」
2002年、21歳の沙弥香さんが受けたのは、母親の末期癌宣告だった。
「母は、いつもキラキラと輝いていました。元美容部員でヘアメイクの仕事もしていて、母の部屋にはメイク道具や香水などのミニボトルが300本ほどありました。いつもそこで遊んでいて、パカッと開くいすの中は、まるで宝箱みたいでした」
幼少期から沙弥香さんの遊び場は、三面鏡の前。ひとりでネイルを塗ったりお化粧をしたりして遊んだ。母を見て、「私も将来はみんなをきれいにする仕事に就きたいな」、そう思った。
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