「魚が獲れないのは海水温の上昇」といった声もあるが…日本の水産業が韓国に抜かれつつある根本原因
日本の水産資源対策は、ピーター・ドラッカーの言う「間違った問題(問い)に対する正しい答えほど、実りがないだけでなく害を与えるものはない」状態になっています。対策しても一向によくなるどころか悪化しています。これは間違った処方箋の薬を飲んでしまっているのと同じです。
国は「国際的に見て遜色のない資源管理」を目指し2020年に漁業法改正を実行して改善しようとしています。しかしながら、必ずしも正しくない情報で偏見が社会的に広がってしまっており、効果が出る対策が打てていません。そしてその間にも魚がどんどん減って悪化しています。
「魚の獲りすぎ」という問題の本質
水産資源管理に関しての科学的根拠に基づく拙記事をご覧になり、理解が誤っていたことに気づかれた全国の方々からコンタクトがあります。マスコミ、研究者、漁業関係者、教育関係者、政治家をはじめ多岐にわたります。そして共通してたどり着く疑問「なぜこんな原因と対策がはっきりしているのに実行ができないのか?」。
ごく一部の例外があるとしたら除きますが、日本では数年もしくは数十年単位でほぼ全魚種の漁獲量が減少を続けています。もちろん気候変動や外国漁船の影響がないとは言いません。しかしながら、世界と比較すれば明確にわかるのですが、問題の本質は獲りすぎになっている国内の資源管理制度なのです。
筆者は、20年以上にわたり、ノルウェーなどの北欧諸国の最前線で、朝から晩まで、サバやアジなどの生産現場を見て回り、魚の検品や買付交渉を行ってきました。そこでは漁獲枠(TAC=漁獲可能量)は、毎年漁獲枠どおりに漁獲され資源管理が機能していました。そして水産業が成長産業になっていくのを目の当たりにしてきました。
世界全体とは対照的に、資源が減って魚が獲れなくなって疲弊が止まらない日本の水産業界。このまま悪いとわかっている仕組みを放置して、魚を獲れなくしてしまう負の遺産を積み上げていってよいのでしょうか? そうならないためには、科学的根拠に基づく魚が消えていく本当の理由に対する社会の理解と、そのための客観的な事実に基づく「教育」が必要なのです。
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