トランプ政権の「ロシア寄り」ウクライナ和平案の背後にいるキーパーソンたち、周辺にうごめく側近・特使たちの素顔

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2025年4月25日、訪ロしたウィットコフ氏はクレムリンでプーチン氏、ドミトリエフ氏らと会談したが、この会談前にウィットコフ氏とドミトリエフ氏は互いに夫人を伴ってモスクワ市内の有名なショッピングエリアで散歩を楽しんだ。

ウクライナで激しい戦闘が続き、ロシア軍による連日のミサイル攻撃で市民に犠牲者が相次ぐ中、和平特使としてロシア入りしたウィットコフ氏のこうした行動について不謹慎に過ぎると筆者は指摘したい。

最後に触れたいテーマがある。トランプ氏が1期目に大統領に当選する前にプーチン政権に何らかの弱みを握られて、プーチン氏にとって思い通りに動かせる政治的「資産」になったとの見方についてだ。

プーチンに弱み握られた「資産」ではない

これについて、筆者は色々取材した。その結果は、この「資産」説を否定する見解ばかりだった。上述した外交筋も「資産説を証明する証拠は1つもない」ときっぱり否定した。トランプ第1期政権で大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を務めたボルトン氏も同様の見解だ。

元側近として、トランプ氏を間近で見ていたボルトン氏はユーチューブ上などでトランプ氏をつねに厳しく批判しているが、この「資産」説をめぐっては「ありえない」と明確に否定する。

トランプ政権1期目に国家安全保障会議(NSC)で対ウクライナ政策を担当したアレクサンダー・ヴィンドマン現下院議員(民主党)も同様に明確に資産説を退ける。同氏はトランプ氏によるウクライナへの不当な圧力を内部告発した人物で、トランプ氏と対立関係にあるが、資産説についてこう解説する。「トランプ氏はプーチン氏の強権ぶりをうらやましがっている。しかし、トランプがプーチンに弱みを握られているとは思わない」。

つまり、プーチン政権に対するトランプ政権の近似化が目立ち始めた今、ウクライナ和平仲介では、トランプ氏の「資産説」というプリズムを通して分析を試みるのは避けるべきだろう。

吉田 成之 新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長

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よしだ しげゆき / Shigeyuki Yoshida

1953年、東京生まれ。東京外国語大学ロシア語学科卒。1986年から1年間、サンクトペテルブルク大学に留学。1988~92年まで共同通信モスクワ支局。その後ワシントン支局を経て、1998年から2002年までモスクワ支局長。外信部長、共同通信常務理事などを経て現職。最初のモスクワ勤務でソ連崩壊に立ち会う。ワシントンでは米朝の核交渉を取材。2回目のモスクワではプーチン大統領誕生を取材。この間、「ソ連が計画経済制度を停止」「戦略核削減交渉(START)で米ソが基本合意」「ソ連が大統領制導入へ」「米が弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約からの脱退方針をロシアに表明」などの国際的スクープを書いた。

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