「インドネシア国産電車」に見る日本企業の存在感 中古車や新造車両に東洋電機製造の機器搭載
――中国向けの輸出は徐々に減っていくということでしょうか。
モーターや制御装置などに関しては、以前の合弁元が独力で国産として作って納めるという図式になっている。一方、別の会社を起こしてメンテナンス関係を引き受けて受注している。そこに使う部品やユニット品は、まだ中国でも作れないものが一部あるので、当社から輸出し、そのメンテナンス会社で販売するというような形になっている。
高速鉄道に関しては、元々ギア関係がメインだったが、一部を引き受けて輸出することは継続している。
――そのほかの国ではどのような案件に関わってきたのでしょうか。
古くはアメリカのワシントンDC地下鉄にモーターを納め、ダラスの交通局やロサンゼルスの交通局なども車両メーカーと共に取り組んだ実績がある。パナマ運河の機関車という案件もある。運河の両岸にレールが敷いてあり、そこに小さい機関車が配置されているのだが、これを2代目に更新するときに当社が受注し、2000年代に3代目に更新するときも受注して今も走っている。
そういう意味で、特殊な技術、仕様など特定のニーズに対応して、そこでアドバンテージを発揮するというところを海外戦略と考えている。
――インドネシアは今後の重点市場となるのでしょうか。
2025年5月期の第2四半期決算時点での海外売り上げ比は、前期比+8.2ポイントの28.5%に拡大した。INKA案件の存在が大きく、今期に限ってみるとインドネシアの割合が中国より大きくなっている。インドネシアは初の地下鉄(MRT)案件を受注したことも併せて、重点市場とする足掛かりとしたいと考えている。今後INKAと協力して車両の国産化を進め、需要を取り込めるよう活動していく。
「日本式」根付くジャカルタ
さかのぼれば、ジャカルタに多数の車両が渡り、現在の主力となっている旧国鉄205系の界磁添加励磁制御装置、直流直巻電動機主電動機の原設計は東洋電機製造の手によるものだ。当時はまさか海を渡るなど想定もされていなかったはずだが、これが電力環境がいいとは言い切れないジャカルタの路線事情に非常にマッチした。他形式に比べ、運転、メンテナンスの面で抜群のパフォーマンスを見せている。

そんな中、ジャカルタの新時代を担う新型車両に同社製品が多数採用されたことは何たる因果だろうか。国産新型電車は、民間ベースで積み重ねてきた日本の鉄道輸出の、まさに好事例だろう。
とはいえ、手放しに喜ぶことはできない。国営企業副大臣は電車100周年式典の新型車両入線のシーンで「もう日本からの中古車両は導入しないとKCIと約束した。新車はまもなくやってくる。一つは中国から、そして最も期待しているのがINKA社製のもう一つの新車だ。100年を経て、ついに国産化を果たした」と発言した。
日本から新車の立ち上げに加わっている複数の関係者が参列している中、あまりにもがっかりさせられる一言だ。過去50年来の円借款援助を含む、日本との協力関係の上にこの新車があるという文脈が欠落している。こういうシーンこそ、日本政府、大使館の出番ではないだろうか。

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