「インドネシア国産電車」に見る日本企業の存在感 中古車や新造車両に東洋電機製造の機器搭載
KCIは、総武快速・横須賀線のE217系の中古車輸入計画が頓挫した後、輸入によるE235系の新車導入を画策した。結局、中国中車が落札し、果たされない夢となってしまったが、KCIはこの思いをCLI-225型に託したと言える。
かつては日本側からもタブー視された中古車両の輸出であるが、日本の仕様、規格を現地に根付かせ、新車にバトンを引き継いだという意味で、中古車両が残した功績はあまりにも大きいものがある。
過去20年間の中古車両調達、保守整備、そして今回の国産新型車両の導入に至る一連の流れは民間ベースで進められてきた。そして、国産新車は結果的に日本企業にとって有利な条件の車両仕様になった。KCIは新車導入にあたり、仕様として欧州のEN規格でなく日本のJIS規格を推した。もしEN規格であれば、当初の予定通りスイスのシュタッドラーが受注していただろう。

民間ベースで「コアジャパン」実現
本来であれば、このような規格の売り込みなど日系企業が参入できる道筋を作ることこそが日本政府の役割であると考えるが、本件に関しては現地大使館すらも一切関わってこなかった。まさに民間外交の勝利と言うべき事象である。

政府主導のオールジャパン輸出は、「必要以上の日本品質の押し売り」であり、価格が高すぎると各地で批判の対象になっている。最終的には、現地の意向に沿って無理やり価格を抑え(入札参考価格を下げ)ざるを得ず、日系企業も離れていった。護送船団方式による親方日の丸の鉄道インフラ輸出は、日本、そして借款被供与国、双方が不幸になる結果に終わった。
そんな中、民間ペースで「コアジャパン」(2023年6月3日付記事『鉄道輸出「オールジャパン戦略」の時代は終わった』参照)を実現したというのは何という皮肉だろうか。インドネシアの国産通勤電車開発の成功は、日本の鉄道システム輸出のあるべき方向性を示している。
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