また、近年注目されているのが、共同生活が子供の免疫系に与える作用である。
入園直後に子供が次から次へと感染症にかかる、通称「保育園の洗礼」に悩まされる家庭は多い(しかも大抵の場合、親もそれをうつされて子供よりも悪化するまでが1セットだ)。しかし、実はこのような軽い感染経験の積み重ねには、後に子供の体を守る作用があるようなのだ。
カナダで1238世帯を対象に行われた8年間の追跡調査では、2歳半になる前に集団保育を開始した子供たちは、家庭保育で育った子供たちに比べて、小学校入学後に感染症にかかる割合が有意に低かったという(*1)。
この子供たちもやはり「保育園の洗礼」を経験していたようで、入園直後(2歳半まで)の期間だけは感染症にかかる割合が家庭保育よりも有意に高かった。アメリカ国立衛生研究所(NIH)が1364名の子供を対象に行った調査でも同様のことが示されている(*2)。
共同生活はアレルギーのリスクを減らす?
免疫系が関わるもう1つの大きな話題として、アレルギーとのつながりにも目を向けてみたい。
保湿によるスキンケアや離乳食の進め方など、子供のアレルギー予防の方針は日々アップデートされている(祖父母が知らぬ「赤ちゃんの最新アレルギー対策」)。その中で改めて注目されているのが「衛生仮説」だ。
アレルギーに関する有力な仮説の一つ「衛生仮説」は、ごく幼いうちにさまざまな微生物に触れることが、その後のアレルギーの予防・軽減に重要だとするもの。アレルギー研究の歴史、現状、そして展望を『アレルギー:私たちの体は世界の激変についていけない』(東洋経済新報社)にまとめたアメリカの医療人類学者、テリーサ・マクフェイル氏の言葉を借りれば、「人生のとても初期のうち(1歳になる前)に多様なバイキンに出会うこと、とりわけ農場や、きょうだいの複数いる大家族の中で暮らすことが体を守ることになるとする」仮説だ。
現代の日本、とりわけ都市部ではなかなか実現しにくい条件だが、保育園などで早くから他の子供や大人と過ごすことが、子供にとっては擬似的な「大家族」環境としてはたらくかもしれない。
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