「今の為替レート」は日本にとってメリットか、それともデメリットか――輸入・輸出競争力、生活への影響を徹底検証

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株価に対しても、円安がプラスになる輸出セクターが残る反面、円安によって増幅されるインフレ懸念が利上げ観測につながり、株価を圧迫する、という面も発生し、円安≒株安という関係も、コロナ禍以降はそれほど強くありません。

円安はいつまで続くのか 為替で世界を読む
(『円安はいつまで続くのか 為替で世界を読む』より)

日本の状況下における「円安」は?

この日銀のレポートを参考にするならば、今の日本の状況下における「円安」は、

・依然としてトータルでは円安は日本経済にプラスと言えるが、それは主に所得収支による影響が大きい
・現状、円安の恩恵を「強く」受けられる企業は輸出企業のうちの大企業に限られ、そうした「円安の恩恵」を強く受けられる企業にとっても、急激な円安はネガティブな効果になり得る
・株価に対するプラスの効果が抑制されており、円安がインフレに繋がる中で消費者のマインド悪化に繋がりやすい
円安はいつまで続くのか 為替で世界を読む (マイナビ新書)
『円安はいつまで続くのか 為替で世界を読む』(マイナビ新書)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

というところでしょうか。

株価や消費者マインドの面では特に、ここ数年の「(急激な)円安」はネガティブに受け止められる部分が大きいように見えます。

輸入インフレによる消費者マインドの悪化については、賃金の伸びが物価の伸びに負けていることで実質賃金がマイナスになっている面も大きいと考えられることから「実質賃金が今後上がれば」その限りではないのかもしれません。

しかし、それが現実化するかどうかは、正直なところ経済環境次第です。

総合的に考えて、現状ではこれ以上「円安が『続いた方が』日本にとって良い」とは必ずしもいえなそうにも思えます。

石川 久美子 ソニーフィナンシャルグループ株式会社金融市場調査部 シニアアナリスト

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いしかわ くみこ / Kumiko Ishikawa

商品先物専門紙での貴金属および外国為替担当の編集記者を経て、2009年4月に外為どっとコムに入社し、外為どっとコム総合研究所の立ち上げに参画。同年6月から同社研究員として、外国為替相場について調査・分析を行う。2016年11月より現職。外国為替市場に関するレポート執筆の他、テレビ東京「Newsモーニングサテライト」など多数のテレビやラジオ番組に出演し、金融市場の解説を行う。また、Xでの情報発信(@KumiIshikawa_FX)なども行っている。

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